
前回の記事ではビットコインキャッシュの1時間足にボリンジャーバンドの逆張り戦略を適用しました。その結果、損失がほぼ一方的に出続ける売買ルールを発見しました。このような売買ルールでは、売り判断と買い判断だけをそっくりそのまま入れ替えて、順張りに切り替えることでプラスにできる可能性があります。今回は入れ替えずに逆張りのまま利益が出る売買ルールを見つけるため、時間単位を変更して検証します。
リップルやイーサリアムと同じようにビットコインキャッシュでも1時間足はボリンジャーバンドの順張りが良いという結果になりました。一方、リップルやイーサリアムの15分足ではボリンジャーバンドの逆張りが有効でした。この流れを踏襲して、ビットコインキャッシュでも15分足で検証します。
■テスト手順の詳細
使用データと対象期間は2019年5月1日から2019年8月25日までの、バイナンスのBCHABC/USDTの15分足です。取引量は10BCHで固定です。まずは手数料やスプレッドを無視して検証します。
初めに定番の期間20、標準偏差σ=2の損益推移グラフを見てみましょう。
リップルでは全然ダメで、イーサリアムはそこまで悪くはありませんでした。ビットコインキャッシュはどうなるでしょう。結果はこちらです。
・BCH/USDT 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間20の損益推移グラフ
まあダメですね。たまたまプラスになってはいますが、始めるタイミング次第ではかなりのマイナスになってしまいます。また、利益に対するドローダウンが大きすぎるので使い物になりません。
続いて、リップルの時と同じように期間を20から少しずつ増やしたり減らしたりしながら見ていきました。増やす方向については期間を100まで増やしても全然ダメでした。しかし、期間120で突然よくなり、120-125の範囲はどれもそこそこ良好でした。この中でも期間123では最も良い結果が出てきました。
・BCH/USDT 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間123の損益推移グラフ
良好な成績ではありますが、取引回数が57回で、ちょっと少ないかなと思います。
期間を延ばすとどうしても取引機会が減少してしまいます。その分、ホールドする時間が長くなるので、売買ルールがマッチすれば平均利益は大きくなり、手数料やスプレッドの易経を小さくすることができます。ただし、取引回数が少ないせいで安定感は犠牲になります。1回の負けで利益がガクッと下がっていることから、視覚的にもわかりやすいと思います。
ともかく、期間を延ばしていく方向で一番よさそうなのは期間120~125のあたりで、特に期間123でした。
次に期間を減らしていく方向です。リップルやイーサリアムでは期間7~9が好ましかったです。ビットコインキャッシュはどうなるでしょう。
検証の結果、期間12あたりから好ましい損益グラフが出てきて、期間11、期間9も悪くありませんでした。ただ、期間10、8、7など期間が1違うだけで良くないグラフになってしまうのでこれはあまり好ましくなく不安要素です。
もっともよかったのは期間6です。
・BCH/USDT 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間6の損益推移グラフ
これはかなり有望そうです。
ちなみに単純に数字だけ見れば期間2はもっと優良です。
しかし、取引回数がたった3回しかありません。少数の取引が偶然利益に転んだだけに過ぎず、再現性がないものと思います。こういう場合は結果が良くても使い物になりません。
ということで、ビットコインキャッシュの15分足ではσ=2、期間6が好ましそうです。
ただ、少し気になることがあります。1時間足の検証の際、リップルやイーサリアムでは標準偏差σ=2で好条件の期間が見つかりましたが、ビットコインキャッシュでは標準偏差σ=2ではダメで、σ=1まで減らしてようやく好条件の期間が見つかりました。そのことを思い出し「もしかすると、ビットコインキャッシュは15分足でも標準偏差を小さくしたほうがいい結果が出るのではないか。」と考えました。
その結果発見したのが「σ=1.5、期間4」です。
・BCH/USDT 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=1.5、期間4の損益推移グラフ
見事な右肩上がりですね。
これは期待できるかもしれません。σ=1.5の場合、期間が4~9の間でおおむね右肩上がりの損益グラフが出ます。その中でも最も良好なのが期間4でした。ただし、期間4の場合でも1取引当たりの平均利益が11ドルと少ないので、手数料考慮の際に影響が大きくなると思います。σ=2、期間6の平均利益は25ドルなので、手数料耐性は強いです。
従って、この2つのパラメータ「σ=1.5、期間4」「σ=2、期間6」を有力候補として詳しく検証を進めていきましょう。
■手数料を反映させる
手数料ナシのプレーンな条件で有望そうなロジックを見つけられたので、手数料やスプレッドを盛り込んで詳しくテストしてみましょう。
・バイナンスの手数料
バイナンスのビットコインキャッシュのスプレッドは0.1ドル≒10円くらいです。取引手数料は条件によってさまざまな幅がありますが、条件達成がさほど難しくない手数料0.06%を採用します。
ストラテジーのプロパティで手数料を0.06%、スプレッドを往復0.1ドル(=片道0.05ドル)に設定します。TradingViewではスリッページとして入力することでスプレッドの考慮を代用できます。
TradingViewでは、バイナンスのBCH/USDTではスリッページ1ティックで往復0.2ドル相当になるため、スリッページは5ティックを設定します。
従って、プロパティの設定は下記の通りになります。
この設定で有力候補として絞り込んだ2つの売買ルールを見てみましょう。
・BCH/USDT 15分足、標準偏差σ=2、期間6、手数料0.06%の損益グラフ
ところどころドローダウンを食らっていますが、ほぼ右肩上がり。ドローダウンも総利益の6分の1以下と優秀です。
期間中のBCHのレートは280ドル~470ドルなので、10BCHの売買なら最大で4700ドルあれば運用できます。それで4か月弱の間に4600ドルの利益が出るというのは相当優秀な売買ルールだと思います。
・BCH/USDT 15分足、標準偏差σ=1.5、期間4、手数料0.06%の損益グラフ
1回の利幅が小さいため、手数料やスプレッドの影響がかなり大きいですが、それでも小さな利益をほぼ一方的に積み立て続けています。ドローダウンは総利益に対してわずか10分の1以下と、夢のような損益曲線です。
先ほどと同様、期間中のBCHのレートは280ドル~470ドルなので、10BCHの売買なら最大で4700ドルあれば運用できます。それで4か月弱の間に6000ドルの利益が出るのは非常に優秀な売買ルールだと思います。
ただし、使用しているのはバイナンスのデータです。バイナンスのビットコインキャッシュは現物のみなので売り立てができません。現実にこの売買ルールを使う場合はロングの利益のみになります。レバレッジ取引が可能な取引所ならショートも狙えるでしょう。
また、ご紹介しているのは手数料条件が0.06%の場合の成績です。バイナンスは条件次第でもっと手数料が下がるので、条件次第ではこれよりも有利になります。
手数料とスプレッドを反映したことで様々な数字が悪化していますが、実用性が期待できる結果かなと思います。現実にこれと同等のパフォーマンスを出すことができていれば、相当な凄腕トレーダーだと思います。
次回の記事では、これらの2つの売買ルールのパフォーマンスサマリーをご紹介します。