ボリンジャーバンド逆張り戦略でイーサリアムを攻略する【後編】

前々回の記事ではイーサリアムの1時間足にボリンジャーバンド逆張り売買戦略である「Bollinger Bands Strategy directed」を適用して検証しました。その結果、1時間足では逆張りは機能せず、順張りが良いという結果が見えました。また、15分足で有望そうな売買条件が見つかりました。そこで、前回は15分足の有望候補を掘り下げました。
今回はこの15分足の売買ルールをロングとショートに分けた場合の損益推移や手数料考慮後のパフォーマンスを検証します。

■ロングとショート、それぞれの損益グラフ
今回の検証ではイーサリアム現物の価格データを使っているので、実際にはショート(空売り)で利益を上げることはできません。このため、ショートの損益はあくまで仮定の値です。とはいえ、レバレッジ取引ならショートも可能ですので、この結果は参考にはなると思います。ロングしかできないとしても、「仮にショートしていれば利益が出ていた」という売買ルールを使うほうが好ましいです。ショートで利益が出ているということは、最適な売り時をうまく捉えられているということです。つまり、ショートで利益が出ていることは買った現物を売却するタイミングの判断が適切であることの裏付けともいえるでしょうから、現物のみの売買にもプラスに働くと思います。

今回使用しているストラテジー「Bollinger Bands Strategy directed」ではロングとショートを別々に表示することができるので、それぞれの損益グラフを見てみましょう。

ロングのみの損益グラフはこちら

まずまずの形ですね。

ショートのみの損益グラフはこちら

こちらもまずまず…。どちらかというとショートのほうがいい形でしょうか。

合わせたものを再掲しますと

このようになっており、バランスがいいです。

ある売買ルールをロングとショートに分けて調べてみると、どちらか片方だけでしか利益が出ていないことは度々ありますが、今回はグラフの形は異なりつつも双方で利益が出ており、重ね合わせることでドローダウンが浅くなり、右肩上がりになっています。
理想的な形と言えそうです。

また、パフォーマンスサマリーは前掲のサマリーをショートとロングで別々に見た場合と同じなので省略します。

■手数料を反映させる
手数料ナシで有望そうなロジックが見つかったら、最後に手数料やスプレッドを盛り込んでテストしてみましょう。

・バイナンスの手数料
バイナンスのイーサリアムのスプレッドは0.1ドル≒10円くらいです。取引手数料は条件によってさまざまな幅がありますが、条件達成が難しくない手数料0.06%を採用します。

ストラテジーのプロパティで手数料を0.06%、スプレッドを往復0.1ドル(=片道0.05ドル)に設定します。TradingViewではスリッページとして入力することでスプレッドの考慮を代用できます。
ただ、バイナンスのETH/USDTのチャートに何らかの不具合があるのか、なぜかETH/USDTスリッページ入力の値が損益グラフには反映されませんでした。このため損益グラフには取引手数料のみ反映されています。

・ETH/USDT15分足、標準偏差σ=2、期間9、手数料0.06%の損益グラフ

1回の利幅が小さいため、手数料やスプレッドの影響がかなり大きいです。
平均利益が69.91ドルとなっていますが、スプレッドを考慮するともう10ドル減って59.91ドルまで下がります。取引1回あたり10ドルの利益が減るため363回で3630ドルが純利益から差し引かれ、21777ドルの利益になります。

ご参考までに、手数料を増やすことで疑似的に大体同じ純利益・平均利益になるように調整したものがこちらです。こちらの手数料率は0.081%になっています。

手数料・スプレッド考慮前に比べると平均利益がかなり減ってしまいましたが、16000ドルスタートから4か月で21777ドルの利益が出るなら十分実用の範囲であり良好な成績だと思います。

ただ、開始時に160ドルだったイーサリアムのレートが途中で300ドルまで高騰しているので、その期間は運用資金を増やすか取引量を減らすかの対応は必要です。
また、バイナンスは現物なので売り立てができません。現実に使う場合はロングの利益のみになります。レバレッジ取引ならショートも狙えます。

また、ご紹介しているのは手数料条件が0.06%の場合の成績です。バイナンスは条件次第でもっと手数料が下がるので、条件次第ではこれよりも有利になります。

最後に、手数料考慮後のパフォーマンスサマリーをご紹介します。
うまく反映させられなかったスプレッド相当分を手数料に上乗せし、手数料を0.081%に設定しています。

手数料とスプレッドを反映したことで様々な数字が悪化していますが、現実的な数字かなと思います。あまりいい成績に見えないかもしれませんが、現実にこれと同等のパフォーマンスを出しているトレーダーは相当な上位層だと思います。

■まとめ
売買ルールは「コツコツドカン」になりがちな逆張り型なので、ドカンが起こった時どうなるか、あるいはどれくらいの頻度で、どれくらい大きなドカンになるのかは要注意です。
もっと長い期間を見てみたいところですが、TradingViewの仕様でこれ以上長い期間を見ることはできません。
実践投入する前に、もっと長期間の15分足のヒストリカルデータを手に入れてエクセル等で解析をしておいたほうがよさそうです。

リップルの有望なパフォーマンスサマリーを見せたボリンジャーバンドを使った逆張り型のストラテジーを前回、前々回、今回と計3回にわたってイーサリアムで検証しました。
その結果、リップルと同様、イーサリアムでも1時間足では様々なパラメータを試してもほぼ一方的に減り続けることがわかりました。
さらに、リップルの場合と同じく、イーサリアムでも有望な売買ルールが15分足で見つかりました。しかし、リップルの場合と比べて有効な期間の範囲が狭かったり、ロングとショートで損益グラフの形がかなり異なったりしました。リップルに適用した際のパフォーマンスに比べると少々劣るかなと思います。それも当然で、イーサリアムもリップルも仮想通貨という共通カテゴリに入れられていますが、なんだかんだで別モノです。似たような動きをすることはありますが、いつも同じ動きをしているわけでもないので、どちらか一方の銘柄のパフォーマンスが良くなるのも妥当ですね。
引き続き、このボリンジャーバンド逆張り手法がビットコインやビットコインキャッシュなどでも通用するかどうか検証してみたいと思います。