ボリンジャーバンド逆張り戦略でイーサリアムを攻略する【中編】

前回の記事ではボリンジャーバンドを使ったイーサリアムの攻略法をリップルの時と同じ手順を踏襲して探索しました。リップルの時と同じく1時間足ではなかなか良い条件が見つかりませんでしたが、売買を入れ替えることで有望そうな売買条件は見つかりました。
売買を入れ替えずに有望な売買条件を見つけるため、時間足を変更し15分足で有望そうな条件を見つけました。その条件は標準偏差=2、期間8でした。リップルの時と全く同じ流れになっていますが、リップルでは期間9が最も優れたパフォーマンスだったのに対してイーサリアムは期間8が最も優れていました。

使用するストラテジーはTradingView内蔵の「Bollinger Bands Strategy directed」というボリンジャーバンドの逆張り戦略です。このストラテジーはパラメータ設定により「ロングのみ」「ショートのみ」のトレードに分けることもできます。

前回記事の最後のあたりでご紹介した標準偏差=2、期間8の損益推移グラフを改めてご紹介します。

※前回執筆時から2日経過し、テスト期間が2019年5月1日から2019年8月24日までとなっているため前回の記事から売買結果がわずかに変わっています

■イーサリアム15分足「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間8の損益推移グラフ

損益グラフの形がかなり有望そうです。
ただ、ちょっと心配なのは前後の期間では損益グラフの形が良くないことです。

期間6の損益推移グラフ

これはかなりひどいです…。

期間7の損益推移グラフ

これも、とても使う気にはなれません。

期間8の損益推移グラフ

再掲です。これなら期待が持てます。

期間9の損益推移グラフ

これもいいですね。

期間10の損益推移グラフ

ちょっと苦しいです。

期間11の損益推移グラフ

非常に厳しいです。

このように、期間8と期間9は損益曲線はきれいなプラスになっていますが、その前後の期間設定では損益グラフの形が良くありません。
リップルの場合はこれくらいの範囲で前後の期間はおおむねきれいな損益曲線が出ていました。
一方、イーサリアムできれいな形が出たのは期間8と期間9だけで、良好な損益グラフになる期間の幅がかなり狭いです。

前後のパラメータでも似たような形でそれなりの成績が出ていることは実は結構重要です。
期間を1替えただけでパフォーマンスが極端に変わったりするようなパラメータ設定でいいパフォーマンスが出ても、たまたまその値がマーケットの動きとフィットしただけでということもあり、突然損に転じたりするのであまり好ましくありません。
ちょっとのパラメータのずれが許容されない可能性もあり少々心配です。リップルのように期間設定の幅に余裕があるほうが好ましいかったです。こういうことは様々な通貨を比較して初めてわかる発見ですね。

ともかく、上記の中で最も優れているのが期間8の設定です。総利益に対するドローダウンが小さめで、トレード回数も十分にあります。この設定のパフォーマンスを詳しく見てみましょう。

■イーサリアム15分足「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間8のパフォーマンスサマリー

パフォーマンスサマリーを見てみます。イケてるサマリーが即座に出てくるのもTradingViewの大きな長所です。こちらがパフォーマンスサマリーです。

まず、サマリーを見て一番最初に注目したいのはロングとショートの両方で同じくらい利益が出ているかどうかです。これは非常に重要なポイントです。どちらか片方に利益が集中していると、単にトレンドに乗っただけに過ぎないという場合があるからです。そういう売買ルールは買って放置、あるいは売って放置と大差ありません。それどころか取引回数が無駄に増える分むしろ損するくらいです。また、トレンドが反転した時に資金がなくなるまで負けてしまうリスクもあります。理想はロングでもショートでも利益が出ることです。次点はロングかショートの片方で利益を出し、もう片方がほぼゼロか微損、微益くらいになるような売買ルールです。
今回の売買ルールは売りでも買いでも同じくらいの利益が出ていてとても理想的です。
その他の項目も見ていきましょう。

・純利益は35739ドル:総利益89560ドル、総損失53821ドル
損失に対して約1.7倍の利益が出ており、理想的です。

ちなみにトレード開始時のイーサリアムのレートは161ドルなので、100イーサリアムだと16100ドルです。また、トレード期間は2019年5月1日から2019年8月24日までなので3か月と3週間。4か月弱です。

16100ドルスタートで、4か月弱で35739ドルも増えて、初期資金も併せて51839ドルにまで増えるとしたら、とてもいい資金の増え方だと思います。資金は3.22倍にもなっており、4か月で利回り322%ということは年換算なら966%にもなります。

もちろんまだ手数料は考慮していませんし、今回見ているのは現物なのでショート分は除きますが、それを差し引いても非常に良好なパフォーマンスと言えそうです。
※手数料反映やロングのみの検証はのちほど行います。

・最大ドローダウンは5678ドル
純利益35739ドルに対して最大ドローダウン5678ドルなので、総利益の1/6くらいが最大ドローダウンです。リップルの純利益:ドローダウンの比と比べると劣りますが、十分優秀な値だと思います。
一番資金が減った局面でも、総利益に対して6分の1以下の損失しか出なかったということです。
初期資金16100ドルと比べると35%の減少で、その観点で評価するとそれなりのドローダウンですが。

・プロフィットファクターは1.67
良好な数字だと思います。

・平均トレード利益は98.5ドル
16000~30000ドル相当の資産を売買して1回あたりの利益が98.5ドルなので、0.3~0.6%程度です。
ロングとショートでの平均利益の差が大きく開いていない点もプラス評価です。

・勝率は67.8%
勝率は高めです。ただ、勝率は単体ではあまり意味がなく、プロフィットファクターやペイオフレシオとセットで評価する必要があります。

・平均勝ちトレードは364ドル、平均負けトレードは460ドル
勝率が高めな代わりに平均利益額よりも平均の負け額のほうが大きくなっています。
平均の価値額と負け額を比率(ペイオフレシオ)と言います。
この売買ルールのペイオフレシオは0.79です。
(ペイオフレシオについて)

ペイオフレシオ=平均利益額÷平均損失額
で算出します。

ペイオフレシオが1未満の時は逆数を見ます。
今回のペイオフレシオは0.79です。
0.79の逆数は1/0.79=1.27なので、平均利益額よりも平均損失額のほうが1.27倍大きいということです。
勝つときは平均で100円増えていて、負けるときは平均で127円減っている。
これだけ見ると損をしてしまいそうです。
しかし、勝率が約7割なのでプラスになります。

10回勝負した時、100円の勝ちが7回、127円の負けが3回なので
700円増える間に381円しか減っていないのです。
このため、10回あたり319円増えていることになります。

・トレードにおける平均バー数は30
1往復の取引に15分足30本分の時間が平均でかかっています。平均トレード時間は450分=7.5時間ということです。
・勝ちトレードの平均バー数は24
・負けトレードの平均バー数は43
負けトレードの決済間隔は勝ちトレードの1.8倍です。
負ける場合はトレードが長引き、勝ちの場合はトレードが短くなっています。
この場合、損失が大きくなるリスクを持っています。
この点は好ましくありません。
以上がパフォーマンスサマリーの解説です。

高い勝率で小さな利益を繰り返しうまく積み上げていますが、そのようなロジックの欠点としていわゆる「コツコツ、ドカン」…つまり、小さく積み立てた利益を大きな損失一回で失うか、下手したらそれ以上の損失を出すということがあり得ます。こればっかりは、逆張り型のロジックでは避けられないリスクです。逆張りロジックは勝率と引き換えに一発大損のリスクを負っています。逆張りロジックは損失無限大です。このため逆張りロジックでは99勝1敗でも負けてしまう可能性があります。そうならないためには損切が重要になりますが、最適な損切幅を設定しないと勝率が下がってしまい、場合によっては収益を悪化させます。ここの匙加減はとても難しいです。

ともあれ、この売買ルールはなかなか有望そうです。
次回はロングとショートに分けた損益グラフや、手数料を盛り込んだ場合にどうなるかなどをご紹介します。