ボリンジャーバンド逆張り戦略でイーサリアムを攻略する【前編】

前回の記事ではボリンジャーバンドをもとにリップルの有望な売買ロジックを探りました。
1時間足ではいい条件が見つかりませんでしたが、15分足ではなかなか期待できそうな売買ルールを発見できました。
今回は同じ売買ルールでイーサリアムを検証します。国内取引所ではイーサリアムがあまり取引されていないので、バイナンスのETH/USDTのデータを使います。

■使用するストラテジー
TradingViewの内蔵ストラテジーの中にはボリンジャーバンドのストラテジーが2種類あります。「Bollinger Bands Strategy」と「Bollinger Bands Strategy directed」です。「Bollinger Bands Strategy directed」は売買の成績だけでなく、「売りのみ」「買いのみ」に分けて検証することが可能なアップグレード版です。今回は現物のチャートを対象としていることもあり、インジケーターから内蔵を選択し、「Bollinger Bands Strategy directed」を選択します。

■売買ルールについて
ボリンジャーバンドの標準偏差σの設定値を超えて下がってきたら売り、割ってから上がってきたら買いという逆張り型の売買ルールで、双方の売買ポイントが発生するたびにドテン売買するロジックになっています。ドテン売買ロジックのため損益グラフには売り立て(ショート)の利益も入っていますが、今回は現物なので実際には買い→売りのトレードだけが有効です。「Bollinger Bands Strategy directed」では買いから入って売る場合のみを取り出すことも可能ですが、売りをどれだけ捉えられているか見たいので、まずはドテン売買での結果を見て、最後に買いのみの結果を分離して評価します。

パラメータは計算期間の本数と標準偏差σの2つです。
画像はよく使われる期間20、標準偏差σ=2でテストする場合のパラメータ設定です。

「Strategy Directed」は0にすると「売買両方のドテン売買」、-1にすると「売りエントリーからの買いクローズのみ」、1にすると「買いエントリーからの売りクローズのみ」でテストできます。まずは売買両方見ていくので0に設定します。

■Bollinger Bands Strategyを様々な条件で検証
まずは手数料を考慮しないで検証します。有望そうであれば最後に手数料やスプレッドを盛り込んだり、買いエントリー→売りクローズのみに分けた場合をチェックします。

取引量は100ETHで固定です。1ETHでもいいんですが、ある程度まとまった取引量のほうが損益額の感覚がわかりやすいと考え、この量にしました。

・1時間足で検証
リップルでは1時間足では全然ダメでしたが、念のため検証してみます。
対象期間は2018年の1月2日から2019年の8月22日までです。

・期間20、標準偏差σ=2の損益グラフ

時間がたつにつれてマイナスがどんどん増えていて、話になりません。ただ、逆の見方をすれば売りと買いを入れ替えればそれなりの利益になっていたという解釈もできます。
このように、手数料とスプレッドをゼロに設定してバックテストした場合に一方的に損失が積みあがるような売買ルールはチャンスということもあります。ただし、くれぐれも注意しなければならないのは、この判断が有効なのは手数料やスプレッドをゼロに設定している場合だけです。手数料やスプレッドを考慮してテストした場合、手数料やスプレッド分のせいで大きくマイナスになっており、売買を入れ替えても損になるようなロジックはたくさんあります。手数料やスプレッドをゼロにしてテストした際に損を出し続ける取引ルールは、それはそれで有望なのです。そういう意味でもまずは手数料ゼロで検証することをお勧めします。売りと買いを入れ替えた場合については損益グラフからざっくり読み取ることしかできませんが、手数料等をゼロに設定することで売買が逆の場合も同時に検証することができるので効率的です。

売りと買いを入れ替えて利益が出るというのはつまりどういうことか、を考えてみましょう。もともとのロジックは逆張り型でした。その結果、ほとんど一方的に損失が積もっています。つまり、イーサリアムの1時間足でボリンジャーバンドを使う場合は逆張りよりも順張りにしたほうがいいということを示唆しています。要するに、標準偏差を上回ったら買って、下回ったら売ったほうがよかったということが読み取れます。

しかし、標準搭載のストラテジーでは売りと買いだけを入れ替えることができません。自分でイチからスクリプト(プログラム)を作る必要があります。わざわざ売買を反転させたストラテジーを使わなくても、上下反転させたグラフの形はなんとなくわかるのですが、それだと最大ドローダウンやパフォーマンスサマリーなどの詳細データは得られないし、手数料を盛り込んだ評価ができないので、可能であれば売買反転でバックテストしたいところですが、プログラムを組むのはかなり大変で、バグのリスクもあるので売買を入れ替えた場合の詳細はご紹介できません。お手数をおかけして申し訳ございませんが、グラフを脳内で上下反転していただければ幸いです…。
同じ観点で
・σ=2、期間17

・σ=2、期間40

の反転グラフも有望そうです。

期間17は期間20と似ていて、最初の盛り上がりが気になります(売買を反転すると利益が上昇している部分は損失に相当することになるので)。
期間20も含めて、この中で使うなら期間40がいいでしょうね。

期間40のグラフを上下反転させたもの=売買をそっくり入れ替えた場合のグラフはこちらです。白い部分が利益に相当します。

とても好ましい形ですね。トレンドを適切に捉え、レンジではほとんど損をしていません。
おそらくレンジ耐性を持ちつつ、トレンドで大きく稼げる理想的なロジックになっていると思われます。
普通、トレンドで大きな利益が出るような売買ルール(≒順張りロジック)はレンジで小さな損を積み重ねてジリ貧になりますし、レンジで稼げるロジック(≒逆張りロジック)は小さく積み立てた利益をトレンドで吐き出してしまいます。
ただ、利益が出ているのは最初の1/3くらいで、残りの2/3は全然動いていないのが寂しいです。この売買ルールに期待して実際にお金を入れて回すのかと言われるとなかなか難しいです。
悪くないとは思いますが…。

ともあれ、1時間足でこのロジックを使うとすれば売買を反転させなければ利益を出せなさそうです。

・15分足で検証
リップルと同じく、1時間足ではいい結果が見つかりませんでした。入れ替えればいい結果になりそうですが、そのままでいい結果が出るものを見たいとこです。時間足を変えるとうまくいくことは少なくありません。リップルは15分足で有望そうな売買ルールが見つかりました。同様にイーサリアムも15分足で検証してみましょう。

テスト手順の詳細
対象期間は2019年5月1日から2019年8月22日までです。取引量は100ETHで固定です。まずは手数料やスプレッドを無視して検証します。

まずは定番の期間20、標準偏差σ=2を見てみましょう。

リップルでは全然ダメでしたが、イーサリアムはそこまで悪くはありません。とはいえドローダウンが大きめなので、使うのはちょっと避けたいところです。

続いて、リップルの時と同じように期間を20から5ずつ増やしたり、1ずつ減らしたりして見ていきました。増やす方向は全然ダメでした。
減らす方向では期間8と期間9には可能性がありそうでした。

σ=2、期間8の損益グラフ

σ=2、期間9の損益グラフ

これは期待できるかもしれません。

この2つの損益グラフを比べると期間9よりも期間8が優れています。
期間8は期間9に比べて勝率がわずかに低いですが、総利益、平均利益、ドローダウンは期間9より優れています。どちらか選ぶなら迷わず期間9です。ちなみにリップルでは期間9が最適でした。

次回はイーサリアム15分足を標準偏差σ=2、期間8に設定して詳しく検証してみましょう。