
■前回の概要
前回の記事ではボリンジャーバンドを使ったリップルの攻略法を探索しました。1時間足ではなかなか良い条件が見つからず、15分足で有望そうな条件を見つけました。その条件は標準偏差=2、期間9でした。
使用しているストラテジーはTradingView内蔵の「Bollinger Bands Strategy directed」です。このストラテジーは設定により「ロングのみ」「ショートのみ」のトレードに分けることもできます。
前回記事の最後のあたりでご紹介した標準偏差=2、期間9の損益推移グラフを再掲します。
有望そうな雰囲気がよく出ています。
■前後の期間設定の損益グラフを確認
念のため、期間9の前後の期間の損益グラフも確認しました。
・期間7の損益推移グラフ
・期間8の損益推移グラフ
・期間10の損益推移グラフ
・期間11の損益推移グラフ
ご覧の通り、どれもなかなかいい形をしています。
前後のパラメータでも似たような形をしていてそれなりの成績が出ていること。これは実は結構重要です。
期間を1替えただけでパフォーマンスが極端に変わったりするようなパラメータ設定だと、たまたま運よくいいパフォーマンスが出ただけという可能性があり、あまり好ましくありません。
この中でも最も優れているのが期間9の設定です。総利益に対するドローダウンが非常に小さく、トレード回数も十分にあります。
この設定のパフォーマンスを詳しく見てみましょう。
■パフォーマンスサマリー
パフォーマンスサマリーを見てみます。いいサマリーが即座に出てくるのもTradingViewの大きな長所ですね。
こちらがパフォーマンスサマリーです。
まず、サマリーを見て一番最初に注目したいのはロングとショートの両方で同じくらい利益が出ているかどうかです。これは非常に重要です。
どちらか片方に利益が集中していると、単にトレンドに乗っただけという場合があるからです。
そういう売買ルールは買って放置、あるいは売って放置と大差なく、トレンドが反転した時に資金がなくなるまで負けてしまうリスクがあります。
今回の売買ルールは売りでも買いでも同じくらいの利益が出ていて非常に素晴らしいです。
・純利益は5016ドル:総利益12265ドル、総損失7248ドル
損失に対して約1.7倍の利益が出ており、理想的です。
ちなみにトレード開始時のリップルのレートは0.3ドルなので、1万リップルだと3000ドルです。また、トレード期間は2019年5月1日から2019年8月19日までなので3か月と20日。4か月にも満たないくらいです。
この結果、かなりすごいのでぜひよく考えていただきたいです。
3000ドルスタートで4か月で5016ドルの利益が出て8016ドルになるというのはとてもいい資金の増え方だと思います。資金は2.672倍になっており、利回り267%、年換算なら800%にもなります。
もちろんまだ手数料は考慮していませんし、今回見ているのは現物なのでショート分は除きますが、それを差し引いても非常に良好なパフォーマンスと言えるのではないでしょうか。
※手数料反映やロングのみの検証はのちほど行います。
・最大ドローダウンは652ドル
純利益5016ドルに対して最大ドローダウン652ドルは極めて優秀な値です。
一番資金が減った局面でも、総利益のわずか7分の1以下の損失しか出なかったのです。
初期資金3000ドルに対しても20%の減少にとどまっています。
・プロフィットファクターは1.69
良好な数字だと思います。
・平均トレード利益は13.71ドル
3000~4000ドル相当を売買して1回あたりの利益が13.7ドルなので、1回の利益は小さめです。
ロングとショートでの平均利益の差が大きく開いていない点もプラス評価です。
・勝率は70.8%
勝率はかなり高めです。ただ、勝率は単体ではあまり意味がなく、プロフィットファクターやペイオフレシオとセットで評価する必要があります。
・平均勝ちトレードは47.4ドル、平均負けトレードは68.4ドル
勝率が高めな代わりに平均の負け額も大きくなっています。
平均の価値額と負け額を比率(ペイオフレシオ)と言います。
この売買ルールのペイオフレシオは0.69です。
(ペイオフレシオについて)
ペイオフレシオ=平均利益額÷平均損失額
で算出します。
ペイオフレシオが1未満の時は逆数を見ます。
今回のペイオフレシオは0.69です。
0.69の逆数は1/0.69=1.45なので、平均利益額よりも平均損失額のほうが1.45倍大きいということです。
勝つときは平均で100円増えていて、負けるときは平均で145円減っている。
これだと損をしてしまいそうですよね。
しかし、勝率が7割なのでプラスになります。
10回勝負した時、100円の勝ちが7回、145円の負けが3回なので
700円増える間に435円しか減っていないのです。
このため、10回あたり265円増えていることになります。
・トレードにおける平均バー数は30
1往復の取引に15分足30本分の時間が平均でかかっています。平均トレード時間は450分=7.5時間ということです。
・勝ちトレードの平均バー数は23
・負けトレードの平均バー数は45
負けトレードの決済間隔は勝ちトレードの倍以上です。
負ける場合はトレードが長引き、勝ちの場合はトレードが短くなっています。
この場合、損失が大きくなるリスクを持っています。
この点は好ましくありません。
以上がパフォーマンスサマリーの解説です。
高い勝率で小さな利益を繰り返しうまく積み上げていますが、そのようなロジックの欠点としていわゆる「コツコツ、ドカン」…つまり、小さく積み立てた利益を大きな損失一回で失うか、下手したらそれ以上の損失を出すということがあり得ます。こればっかりは、逆張り型のロジックでは避けられないリスクですね。逆張りロジックは勝率と引き換えに一発大損のリスクを負っているのです。逆張りロジックは損失無限大です。このため逆張りロジックでは99勝1敗でも負けてしまう可能性があります。そうならないためには損切が重要になりますが、最適な損切幅を設定しないと勝率が下がってしまい、場合によっては収益を悪化させます。ここの匙加減はとても難しいです。
順張りも逆張りもそれぞれ一長一短です。
ともあれ、この売買ルールはなかなか有望そうです。
ロングとショートに分けたり、手数料を盛り込んだ場合にどうなるかなどを見てみましょう。
■ロングとショート、それぞれの損益グラフ
今回は現物の価格データを使っているので、実際にはショートで利益を上げることはできません。あくまでショートは仮定の値です。とはいえ、レバレッジ取引ならショートも可能ですので、参考にはなると思います。
このストラテジーはロングとショートを別々に表示することができるので、それぞれの損益グラフを見てみましょう。
ロングのみの損益グラフはこちら
ショートのみの損益グラフはこちら
ロングとショートを分けたときに片方だけしか利益が出ていないことは少なくありません。今回はロングでもショートでもだいたい似たような形で同じように利益が出ており、とても好ましいです。
それぞれのパフォーマンスサマリーについては前掲のパフォーマンスサマリー一覧表にあるロングの項とショートの項に書かれている数字と全く同じなので省略します。
■手数料を反映させる
手数料ナシで有望そうなロジックが見つかったら、最後に手数料やスプレッドを盛り込んでテストしてみましょう。
・バイナンスの手数料
バイナンスはリップルのスプレッドが0.0001ドル≒0.01円くらいです。手数料は条件によってさまざまな幅がありますが、条件達成が難しくない手数料0.06%を採用します。
ストラテジーのプロパティで手数料を0.06%、スプレッドを往復0.0001ドル(片道0.00005ドル)に設定します。スプレッドはスリッページで代用できます。
TradingViewではバイナンスのXRP/USDTは1ティックで往復0.00002ドルになっているので、スリッページを5ティックに設定します。
※TradingViewでは1ティックがいくらになっているかは銘柄ごとにマチマチなので、その都度確認する必要があります。
・XRP/USDT15分足、標準偏差σ=2、期間9、手数料0.06%、スプレッド5の損益グラフ
1回の利益が小さいので手数料やスプレッドの影響がかなり大きいです。
平均利益がかなり減ってしまいましたが、それでも良好な成績です。手数料やスプレッドを反映させてなおこれだけの結果が出るのは、かなり好ましいと思います。3000ドルで始めて4か月経たずに3000ドル増えているわけですからパフォーマンスも相当なものです。
パフォーマンスサマリーはこちらです。
手数料とスプレッドを反映したことで様々な数字が悪化していますが、現実的な数字だと思います。これなら実用を検討する価値があると思います。
とはいえ、「コツコツドカン型」なのでドカンが起こった時どうなるか、あるいはどれくらいの頻度で、どれくらい大きなドカンになるのかは要注意です。
もっと長い期間を見てみたいところですが、TradingViewの仕様でこれ以上長い期間を見ることはできません。
実践投入する前に、もっと長期間の15分足のヒストリカルデータを手に入れてエクセル等で解析をしておいたほうがよさそうです。
■まとめ
前回、今回と2回にわたってボリンジャーバンドを使った逆張り型のストラテジーでリップルの攻略を試みました。
1時間足では様々なパラメータを試してもほぼ一方的に減り続けてしまうという厳しい結果になりました。裏を返せば、順張りならほぼ一方的に増え続ける可能性があるということはわかりました。ボリンジャーバンドは異常な騰落を検知する方法ですが、異常に上がったときはさらに上がり、異常に下がったときはさらに下がるという仮想通貨の恐ろしい性質を示唆しているのかもしれません。
15分足ではかなり良好な売買ルールが見つかりました。少なくとも検証した期間では有望な結果が出ました。ただし、期間が4か月弱と短いのが心もとないです。もっと長期間で検証してリスクや欠点を把握したうえであれば、運用してみる価値はあるかもしれません。
今後はこの手法がビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュなどでも通用するかどうか検証してみたいと思います。