ビットコインの有望売買ルールをイーサリアム1時間足で検証

前回までの記事で、

・ビットフライヤーのビットコイン(BTC)FX
・BitMEXのBTCFX
・ビットフライヤーのBTC現物
・バイナンスのBTC現物

上記4銘柄の1時間足で良好なパフォーマンスを発揮する売買ルールをご紹介しました。少しずつ異なるビットコイン銘柄に対してパフォーマンスが良かったことから、このルールは現物でもレバレッジでも、国内でも海外でも、BTC関連銘柄であれば役立つのではないかと思います。
この売買ルールはBTC以外の銘柄でも通用するでしょうか。これからそのあたりを検証していきたいと思います。そこで、今回はビットコインの次に時価総額が大きいイーサリアム(ETH)を検証します。ただ、国内ではあまりETHの取引は行われていないので海外取引所を見るほうがよさそうです。買いと売りの両方を見たいのでBitMEXのETH/USD(ETHFX)を対象にします。

■ストラテジーとパラメータの設定

BTC攻略法でご紹介したTradingViewの内蔵ストラテジー「Volty Expan Close Strategy」を使います。
Volty Expan Close Strategyの売買ロジックについてはこちらの記事をご覧ください。
このストラテジーで、パラメータはBTC関連4銘柄の1時間足で良好なパフォーマンスを見せたNumATRs=2に固定してバックテストします。

■売買ルールの詳細

対象期間は2018年の8月3日から2019年の8月16日までです。取引量は1ETHに固定します。

BTC1時間足のバックテストの時と同様に、NumATRsは2に固定し、同様に期間を1から順に増やしていきます。

検証する売買ルールが純粋な騰落を捉えることができるかどうかをみるために、まずは手数料やスプレッドを無視して検証します。十分な利益が出そうな検証結果が出たら、最終段階で手数料やスプレッドを考慮して検証します。

■BitMEX ETHFX 1時間足をVolty Expan Close Strategy NumATRs=2でバックテスト

まずは期間1からです。
損益グラフはこのようになりました。
期間1

なんと、BTC/USDの時とは打って変わって、見る影もないほどひどい損益グラフになってしまいました。しかも手数料を考慮する前です。手数料を考慮したらもっとひどいことになります。これはあまり良くないスタートですね。
期間の値を増やしていきましょう。

期間2

期間2ではむしろ悪化しました。

期間3


期間3でも特に改善せず。

期間4


期間4も同様です。

期間5


多少マシになりましたが、利益に対するドローダウンが大きすぎて使い物にはなりません。

期間6


また期間2~4と同じような形になりました。

このまま1つずつ期間を増やしていっても事態は改善せず…。どうやらこの設定はBTCには有効でもETHには通用しなさそうです。パラメータを見直してみましょう。

■NumATRsを変更する

期間を問わず、NumATRs=2では売買タイミングがほとんど捉えられていませんでした。
そこで、今度は期間を1に固定してNumATRsを変更してみました。

NumATRs=2.5

全然ダメですね…。

NumATRs=3

これは今までの中では一番マシかもしれません。
ただ、期間を変更したとたんに損益グラフの形は乱れ、パフォーマンスが悪化します。これはあまり筋が良くなさそうです。

では、逆にNumATRsを減らしてみるのはどうでしょう。

NumATRs=1.5
やはりダメですね。念のためNumATRs=1も見ておきましょう。

NumATRs=1


なんと!なぜかBTCの時のような右肩上がりのきれいなグラフが出てきました。
NumATRs はどれだけ大きく動いたらエントリーするかというパラメータです。このパラメータを小さくしたことで損益が改善して騰落をうまくとらえられるということは、イーサリアムはビットコインよりもボラティリティ(値動きの荒さ)が小さいのかもしれません。

こうなると逆にNumATRsをもっと下げてみたくなります。
NumATRs=0.5の場合はどうなるでしょう。

NumATRs=0.5

今度はエラーになってしまいました。TradingViewの仕様で、設定期間中に3000取引を超える場合はエラーになってバックテストが表示されません。
パラメータの閾値(しきいち)を小さくし過ぎたせいで取引機会が増えてしまったことが原因でしょう。

もう少し大きくします。
NumATRs=0.8

取引回数が増えて、利益も増えました。NumATRs=1よりも向上しています。
まだ下げられそうなのでもうちょっと攻めてみます。

NumATRs=0.6


トレード回数が2990回でギリギリです。NumATRs=0.8やNumATRs=1の場合に比べるとパフォーマンスは低下しました。
これからするとNumATRsは1から0.8がよさそうです。

もうちょっといろいろ見るとNumATRs =0.7はさらに好ましい成績でした。
しかしNumATRs =0.7は期間を変えるとすぐパフォーマンスが低下するので偶然の可能性もあります。このような細かい設定が偶然マッチしていいパフォーマンスになってもあまり意味がないので、キリの良いNumATRs =1で期間を変えて検証します。

■BitMEX ETHFX1時間足をVolty Expan Close Strategy NumATRs=1でバックテスト

NumATRs=1で、期間を1から増やしていきます。
まず、期間1の損益グラフです。


先ほど掲載した損益グラフを、チャートをつけて再掲します。とてもきれいな形状ですね。

期間を上げていきます。

期間2


さらにパフォーマンスが向上しました。損益グラフもいい形です。
づついて期間3です。

期間3

残念ながら悪化してしまいました。
このまま期間を増やしても改善しませんでした。

期間は1か2の設定が妥当そうです。
ただ、期間3から悪化するので期間2のパフォーマンスは偶然の一致という可能性もあります。

ともあれ、BitMEXのETHFXでうまくとらえられる可能性がありそうなパラメータはNumATRs=1で、期間1と期間2に絞り込めました。
しかし、ここからが問題です。このバックテストはまだ手数料を考慮していないのです。
そしてBitMEXの手数料は高額です。手数料を盛り込むとどうなるでしょうか。

■BitMEXの手数料

・スプレッドと取引手数料
BitMEXでは板が非常に分厚く、スプレッドはおおむね1ティックの0.05ドルです。一方、取引ごとにかなり高めの取引手数料がかかってしまいます。メイカー手数料はマイナス手数料、すなわち手数料受け取りが可能ですが、このロジックは順張りなのでメイカーで約定させることはほとんど不可能です。テイカー手数料は0.075%で、片道ごとにこれを支払う払うことになります。

■テイカー片道手数料0.075%を反映させたバックテスト

パラメータはそのままで、ストラテジーのプロパティで手数料を0.075%に設定します。

この条件でバックテストすると次のようになりました。

NumATRs=1、期間1

一気に悪化してしまいました。頻回の取引を行う場合に手数料の影響がいかに大きくなるかということを物語っています。

NumATRs=1、期間2

ところどころドローダウンが気になりますが、まずまずのパフォーマンスです。
まあ使えるだろうな、くらいですね。しかしBTCの時のような爆益への期待感は持ちにくそうです。それでも裁量で適当にやるよりはよさそうですが…。

■まとめ

Volty Expan Close StrategyのNumATRs=2は様々なBTC関連銘柄の1時間足で良好なパフォーマンスを誇っていましたが、イーサリアムでは全然ダメでした。
パラメータを変えてNumATRs=1にすると少しは期待できそうでしたが、取引回数がとても多く、頻回売買での薄利積み立て型になっているため手数料の影響がとても大きいです。このため、手数料まで考慮すると思ったより大きな利益が出せません。
NumATRsは値動きの激しさを指標として売買チャンスを捉えるための指標です。ビットコインで効果てきめんだったパラメータがイーサリアムで機能しないということは、「値動きの質」が異なっていることを示唆しているように思います。つまり、多くの仮想通貨はビットコインの値段と連動して上下するとされていますが、連動するのは値動きの方向だけで、値動きの割合は通貨ごとにマチマチなのかもしれません。BTCでうまくいく売買ルールはほかの仮想通貨でも代替通用するだろうと思っていましたが、そんな簡単な話でもなさそうです。ただ、もしかするとイーサリアムだけが例外かもしれません。次の記事では念のためリップルについてもこのロジックを当てはめて検証してみます。