EUR/USDの1時間足にブレイクアウト逆張りロングでアプローチ【実践前検証】

前回までの記事で、公開ストラテジーの「Breakout Range Short Strategy Backtest」がユーロドルの1時間足において、期間設定を長期にすることで有望な売買ロジックになることを確認し、特に期間250~300が好ましくなっていることをご紹介しました。
前回の記事ではその中からもっとも良好なパフォーマンスが出ていた期間278をピックアップしてパフォーマンスサマリーを詳しく見ました。

ここまで、純粋な騰落の的中具合を評価するために、意図的にスプレッド・手数料を考慮せずに検証していました。その結果、有望な売買ルールである可能性が高いことがわかったので、今回は最終段階として、実践を踏まえて手数料(スプレッド)を盛り込んだり、損益再投資(複利投資)を検討します。

■スプレッドを設定する
ストラテジーの設定ウインドウからプロパティを選択し、スリッページに数字を入力することでスプレッドを設定できます。
ユーロドルの場合、スリッページを1ティック増やすと「往復で」0.2pipsのスプレッドが盛り込まれます。

※この画像は「Breakout Range Long Strategy Backtest」となっていますが「Breakout Range Short Strategy Backtest」も全く同じ設定ウインドウです。

提示スプレッドが0.4であり、かつ提示スプレッド通りに約定するなら「往復で」0.4pipsのスプレッドがコストとしてかかることになります。
国内ではユーロドルの提示スプレッドが0.4pipsくらいのところは多いです。ただ、皆さんがご存じの通り、FXはレート提示型で、スリッページがあります。板注文とは異なり、レート提示型では注文時のレートと約定時のレートがずれることはとても多く、必ずしも提示レートの通りに約定するとは限りません。このため、実際に売買した時のスプレッド(実質スプレッド)は提示レートより大きくなることが多いです。一方で、小さくなることはなかなかないと思います。

したがってスプレッドを盛り込むときは提示スプレッド通りの0.4pipsに設定するのはあまり好ましくありません。提示スプレッドが0.4pipsなら余裕を見て2倍の0.8pips以上に設定するほうが良いと思います。ということで、安全策を取って1.0pips設定します。
スリッページ1ティックに対してスプレッドが0.2pipsになるので、5ティックなら1.0pipsに設定できます。

※こちらの画像も「Breakout Range Long Strategy Backtest」となっていますが、やはり「Breakout Range Short Strategy Backtest」も全く同じ設定ウインドウです。

さて、これでスプレッドが1.0pipsに設定できました。
早速この設定での損益推移グラフを見てみましょう。

・「Breakout Range Short Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=278 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時の損益推移グラフ

スプレッドを1.0pipsに設定したことにより、平均トレード益が2.86ドルから1.86ドルへ大きく減少しています。損益推移グラフも魅力的な形ではなくなってしまいました。スプレッド未考慮の条件のときには1ドル未満の利益が出ていたような薄利トレードは、スプレッドの影響によって損失に転落しており、それにともなって勝率も下がっています。
このように、トレード1回あたりの利益が小さいほど、スプレッドや手数料の影響が大きくなってしまいます。
パフォーマンスサマリーも確認してみましょう。

・「Breakout Range Short Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=278 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時のパフォーマンスサマリー

こちらがスプレッド考慮後のパフォーマンスサマリーです。

スプレッドを入れたのだから当然ですが、様々な数値が悪化しています。
前回記事でご紹介済みの既出情報ですが、参考のためにスプレッド考慮前のパフォーマンスサマリーも再掲しま

す。

こちらがスプレッド考慮前のパフォーマンスサマリーです。
スプレッドの影響を大きく受けて、平均利益と総利益が4割以上減っています。

実践でこの結果ならまあ悪くはないですが、それほど魅力的な売買ルールではなくなってしまいました。スプレッドを少なめに見積もればパフォーマンスはよくなりますし、厳しめに見積もればパフォーマンスは悪くなります。

別の観点からすると、わずかなスプレッドや手数料がここまで大きな差をもたらすということは、これらが大きなノイズにもなり得るということです。つまり、スプレッドが中途半端に入れられたサマリーを見ても、パフォーマンスがいいのか悪いのかわかりにくくなってしまいます。そうならないためにも、まずはスプレッドや手数料がゼロの条件でチェックして、有望そうだと思える場合に手数料を盛り込んで再検証するのがおすすめです。
もともと平均利益が2.9pips相当で、小さめだったのでスプレッド考慮で大きく悪化することは予想通りだったりもします。

■収益再投資の検証
TradingViewではレバレッジ取引に対応しておらず、レバレッジ取引をした場合の損益推移グラフを検証することはできません。TradingViewではレバレッジ1の場合に限ってのみ、損益再投資のシミュレーションが可能です。
ピラミッディング機能を使うことで疑似的にレバレッジ取引を検証する方法もあるのですが、残念ながら今回の売買ロジックではピラミッディングが発生する機会がないため、その方法も使えません。

ピラミッディングとは、乱暴に言うとナンピンの親戚です。ナンピンは損をしたときにさらに損失方向に取引量を上乗せする手法で、勝率は上がりますが破産リスクが上昇する手法です。逆に、利益が出ているときに限り取引量を上乗せする方法をスケールインと言い、勝率は下がりますが破産リスクも低下します。
通常、ピラミッディングはサイン継続時に取引量を上乗せするので、順張りの時はスケールイン寄りに、逆張りの時はナンピン寄りになります。今回の売買ロジックは逆張りなのでナンピンに似た振る舞いとなるはずです。しかしロジックの特性上ピラミッディングが機能しないストラテジーとなっています。このため、レバレッジ1の場合を確認することしかできませんでした。
レバレッジ1の場合の損益再投資の損益推移を見てみましょう。
まずは設定です。

※画像は「Breakout Range Long Strategy Backtest」のものですが、「Breakout Range Short Strategy Backtest」でも設定は全く同じです。

資産比を選択して100%にします。初期費用はわかりやすく10000ドル(1万通貨)にします。
ピラミッディングは機能しないので1のまま。スプレッドとしてスリッページに5を入れます。
この条件で損益推移グラフを見てみましょう。

・「Breakout Range Short Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=278 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時の損益推移グラフ(損益再投資:レバレッジ1)

レバレッジが1なので、1万通貨固定の時の結果と比べてもあまり代わり映えしません。できればレバレッジ5~10くらいの場合も見てみたかったのですが、TradingViewの仕様上不可能なので仕方ありません。
見るべきところは純利益と最大ドローダウンの%です。
これまでの検証結果はすべて取引数量を1万通貨に固定した場合のものでした。収益率(%)やドローダウン率(%)の%の値には意味がありませんでした。一方、今回は損益再投資型なので、収益額やドローダウン額にあまり意味はなく、収益率(%)やドローダウン率(%)が重要になります。
損益率は2.66%です。100万円スタートなら26,600円の利益になっていた可能性があるということです。また、最大ドローダウン率は0.89%です。これは極めて小さい値です。このように、損益再投資型の検証では率の値に意味がある点が有用です。
レバレッジを増やすとプラス・マイナスいずれも率の数字が急速に大きくなっていきます。為替で、レバレッジ1でも21か月で2.66%もの利回りが出る売買ルールはかなり優秀だと思います。

詳細は省きますが、エクセルを使って簡単に確認してみたところ
レバレッジ3なら約10.9%
レバレッジ5なら約18.7%
レバレッジ8なら約30.9%
レバレッジ10なら約39.5%
レバレッジ20なら約86.7%
の利回りになっていました。これぞ複利計算の暴力ですね。
損益推移グラフはこのようになります。

縦軸は100万円スタート時の資産推移、横軸はトレード回数です。
レバレッジが高いほど浮き沈みも激しくなり、大勝のチャンスを得る一方で、同時に破産リスクも急上昇していることが視覚的によく理解できると思います。レバレッジはほどほどにしましょう。
ともあれ、右肩上がりに損益推移するような売買ルールで損益再投資をすると、凄まじい利益をたたき出すことが多いです。

また、今回のストラテジーは逆張り型のロジックなので最大ドローダウン以上の含み損を抱えることがあります。場合によっては証拠金がなくなって強制決済ということもあり得ます。したがって、あまり大きなレバレッジをかけるのは危険です。

ということで、4回にわたってチャネルブレイクアウトの逆張りロング戦略をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
逆張りショートの時と似たような結果になりました。筆者はこの売買ロジックは売りでも買いでもプラスになりうる有望なものだと感じました。
今後もこのロジックの研究を続けていきます。何かいい情報をつかんだら、また改めて記事でお知らせします。