
前回の記事4本で、ユーロドルの1時間足にブレイクアウトのショート逆張り戦略を検証しました。その結果、有望な売買ルールを見つけることができました。ただ、検証に使用したストラテジーはショートしかできないものでした。そこで、今回は同じストラテジーのロングを検証したいと思います。
■使用するストラテジー
TradingViewの内蔵ストラテジーの中にはチャネルブレイクアウトのストラテジーがあります。名前はそのままで「チャネルブレイクアウトストラテジー」です。ただ、この内蔵ストラテジーは売りと買いを別々に見ることができず、順張り戦略のみの固定となっており、売買の入れ替えができません。
そこで、前回までの4記事ではユーザーが作成した「公開ストラテジー」である「Breakout Range Long Strategy Backtest」を使用しました。今回は「Breakout Range Long Strategy Backtest」と同じ方が作成したストラテジーである「Breakout Range Short Strategy Backtest」を用います。
ロングを検証するのになぜShort Strategyを使うのかというと、この2つのストラテジーは売買入れ替え機能がついていて、通常は順張りストラテジーですが、チェックボックスをオンにするだけで簡単に売買を逆転させ、逆張りストラテジーに切り替えることできます。つまり、ショートのストラテジーを逆転させることで逆張りロングを検証します。
前回までの記事ではロングのストラテジーを逆転させることにより、逆張りショートを検証しました。
【公開ストラテジーはリペイントに注意】
TradingViewの公開ストラテジーの中にはリペイント(都合の悪い取引をなかったことにする後出しじゃんけん型の売買ストラテジー)がたくさん含まれているため、公開ストラテジーを使用する際は注意が必要です。
TradingViewで大人気のストラテジーはプロフィットファクターが10以上で、勝率9割以上のものがゴロゴロありますが、すべてリペイント型で全く使い物になりません。リペイント型のストラテジーは使えば使うほど面白いくらい資金が減っていきます。決して使わないほうが良いと思います。
筆者はTradingViewの公開ストラテジーを使用する際は実際に取引で使う前にデモまたは最小数量のトレードで挙動を事前によく確認しています。皆様もTradingViewを使用する際はくれぐれもリペイントにお気を付けください。
この事情を知らずにTradingViewのストラテジーを使うのはとても危険なうえに時間の無駄になります。すでにご存じの方にとっては何の意味もない情報ですが、知らない方もとても多いと思うので、念のため本サイトの記事の中でもたびたび注意喚起しています。
今回使用するストラテジーも公開ストラテジーの一つです。しかし、作者の方がリペイントを嫌っているようで、リペイントによく注意して対策しています。具体的には1本前のローソクの終値が確定してから売買判断を行い、始値で売買するシステムになっています。このため現在値で判断するストラテジーに比べると売買が遅れがちですが、リペイントの心配がとても低くなっています。
ただし、筆者が確認しているからと言って鵜呑みにしてはいけません。トレードへの活用を検討する際には、リペイントを気にしている本サイトの記事で紹介されたストラテジーであろうと、リペイントがないこと、正しく動作することを必ずご自身で事前に確認してください。インターネットで得た情報、特にトレードに関する情報は話半分にとどめ、残りの半分以上は必ず自分の手で、目で、頭で確かめることが重要です。リペイントへの注意については過去の記事をご覧ください。
以上のことに注意しつつ、公開ストラテジーの「Breakout Range Short Strategy Backtest」を使用します。
■「Breakout Range Short Strategy Backtest」の売買ロジック
「Breakout Range Short Strategy Backtest」はチャネルブレイクアウト戦略を、ショートのみに絞ったものです。リペイントがないように慎重を期したロジックになっており、売買判断や売買レートとして、現在値ではなく終値と始値を使用しています。
※TradingViewでリペイントするストラテジーの多くは現在値を使っていますが、現在値を使う公開ストラテジーはバグが起こりやすく、使用の際には注意が必要です。
・設定
パラメータは「Look Back」1つだけです。過去何本のバー(ロウソク)を見るかというパラメータです。画面の場合は過去20本分の最高値と最安値を判断基準にします。
チェックボックスの「Trade reverse」は便利で有用な機能です。これは売買ルールを保存したまま、売りと買いだけをそのまま入れ替えるというものです。一方的に損失が出続けるようなルールが見つかった場合、「Trade recverse」を有効にすると、一方的に利益が出続けるような損益推移グラフが得られます。単に損益推移グラフが見たいだけなら上下反転させれば確認できますが、ドローダウンやPFなど細かいパフォーマンスサマリーまで確認したい場合はグラフを反転させるだけではどうにもなりません。「Trade recverse」を使うことで売買をそっくり入れ替えた場合のパフォーマンスサマリーをチェックすることが可能になります。
・売買ロジック
「Look Back」の設定期間が20の場合、過去20本分の最高値を更新したバーの次のバーの始値で売ります(ショート)。最高値が更新される限りは買いのままホールドし続け、最高値の更新が止まるとその次のバーの始値で決済(買戻し)するという順張りロジックです。このストラテジーはショート(売り)でのエントリーしか行わず、ロングのエントリーはありません。当然、ドテン売買もしません。基準値よりも下がったタイミングでショートのみを行う順張りショート専用のロジックです。
一方、「Trade recverse」にチェックを入れると売りエントリーと買い戻しがそっくり入れ替わります。「Look Back」の設定期間が20で、かつ「Trade Reverse」にチェックを入れた場合、過去20本分の最安値を更新したバーの次のバーの始値で買いエントリー(ロング)します。最安値が更新される限りは買いのままホールドし続け、最安値の更新が止まるとその次のバーの始値で決済売りするという逆張りロジックに変わります。チェックを入れた場合はロングでのエントリーしか行わず、ショートのエントリーはなくなります。また、売買を反転させるだけですので、チェックボックスがナシの場合のときと同じく、ドテン売買は行いません。
■「Breakout Range Short Strategy Backtest」をEUR/USDの1時間足に適用
このロジックを使ってEUR/USDの1時間足にアプローチします。まずは手数料を考慮しないで検証します。手数料やスプレッドをゼロに設定して検証をすると、一方的に損失が出ていくようなロジックが見つかった際は「Trade recverse」をチェックするだけで有望な売買ルールに早変わりします。
有望そうな売買ルールが見つかった際は手数料やスプレッドを盛り込んで詳細に検証します。取引量は10,000通貨固定です。
設定のプロパティはこのようになります。
検証期間は2018年1月1日から2019年9月28日です。
・「Breakout Range Short Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=20 反転チェックボックスオン の損益推移グラフ
まずはチャネルブレイクアウトでよく使われる期間設定でもあるデフォルトの期間20の損益推移グラフを見てみます。チェックボックスはオンにします。逆張りロングになります。
設定はこの通りです。
損益推移グラフはこのようになりました。
まあ、話にならないですね。パラメータを変更してみましょう。
パラメータは「LookBack」1つだけなので調べるのも簡単です。
ということで1から100まで調べてみました。
逆張りショートの時は期間8のような超短期設定から期間300のような超長期設定に至るまで幅広く良好な損益推移グラフが次々出てきましたが、今回は100以下は全然ダメでした。しかし、100を超えたあたりから徐々に好転し、200を超えたあたりからはさらに良好になりました。逆張りショートの時と同じく、期間が長いほうが有利になりそうです。
下記は期間(LookBack)220の損益推移グラフです。
・「Breakout Range Short Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=220 反転チェックボックスオン の損益推移グラフ
かなりマシになりました。やはりこのストラテジーは長期設定が向いているようです。
次回はこのストラテジーの長期設定を、より詳しく掘り下げてみます。