チャネルブレイクアウト戦略でEUR/USDを攻略する【実践前の検証】

前回までの記事で、公開ストラテジーの「Breakout Range Long Strategy Backtest」がユーロドルの1時間足において、超短期から超長期までの幅広い期間設定で有効であることを確認し、その中から期間15と期間300をピックアップしてパフォーマンスサマリーを詳しく見ました。

ここまで、純粋な騰落の的中具合を評価するために、意図的にスプレッド・手数料を考慮せずに検証していました。その結果、有望な売買ルールである可能性が高いことがわかったので、今回は実践を踏まえて手数料(スプレッド)を盛り込んだり、損益再投資(複利投資)を検討します。

■スプレッドを設定する
ストラテジーの設定ウインドウからプロパティを選択し、スリッページに数字を入力することでスプレッドを設定できます。
ユーロドルの場合、スリッページを1ティック増やすと「往復で」0.2pipsのスプレッドが盛り込まれます。

提示スプレッドが0.4であり、かつ提示スプレッド通りに約定するなら「往復で」0.4pipsのスプレッドがコストとしてかかることになります。
国内ではユーロドルの提示スプレッドが0.4pipsくらいのところは多いです。ただ、皆さんがご存じの通り、FXはレート提示型で、スリッページがあります。板注文とは異なり、レート提示型では注文時のレートと約定時のレートがずれることはとても多く、必ずしも提示レートの通りに約定するとは限りません。このため、実際に売買した時のスプレッド(実質スプレッド)は提示レートより大きくなることが多いです。一方で、小さくなることはなかなかないと思います。

したがってスプレッドを盛り込むときは提示スプレッド通りの0.4pipsに設定するのはあまり好ましくありません。
提示スプレッドが0.4pipsなら2倍の0.8pips以上に設定するほうが良いと思います。
ということで、安全策を取って1.0pips設定します。
1ティックで0.2pipsになるので、5ティックで1.0pipsに設定できます。

これでスプレッドが1.opipsに設定できました。
早速損益推移グラフを見てみましょう。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=15 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時の損益推移グラフ

スプレッドを1.0pipsに設定したことにより、平均トレード益が2.17ドルから1.17ドルへ大きく減少しています。損益推移グラフもあまり魅力的な形ではなくなってしまいました。スプレッド未考慮の条件のときには1ドル未満の利益が出ていたような薄利トレードは、スプレッドの影響によって損失に転落しており、それにともなって勝率も下がっています。
このように、トレード1回あたりの利益が小さいほど、スプレッドや手数料の影響はどんどん大きくなってしまいます。
パフォーマンスサマリーも確認してみましょう。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=15 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時のパフォーマンスサマリー

スプレッドを入れたのだから当然ですが、様々な数値が悪化しています。
こちらがスプレッド考慮後のパフォーマンスサマリーです。
前回記事でご紹介済みの既出情報ですが、参考のためにスプレッド考慮前のパフォーマンスサマリーも再掲します。

スプレッドの影響を大きく受けて、平均利益と総利益が4割以上減っています。

実践でこの結果なら悪くはないですが、それほど魅力的な売買ルールではなくなってしまいました。スプレッドを少なめに見積もればパフォーマンスはよくなりますし、厳しめに見積もればパフォーマンスは悪くなります。

これは、スプレッドや手数料が大きなノイズにもなり得るということです。
スプレッドを中途半端に入れられたサマリーだけを見ても、パフォーマンスがいいのか悪いのかわかりにくいので、まずはスプレッドや手数料がゼロの条件でチェックしてから手数料を盛り込むのがおすすめです。
ちょっと残念な結果ですが、平均利益が2.1pips相当と、小さめだったので予想通りだったりもします。
引き続き、期間=300の場合も見てみましょう。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=300 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時の損益推移グラフ

期間15の時とは異なり、手数料を考慮してもなお損益推移グラフは魅力的な形を保っています。
これは、期間15の場合に比べて期間300の場合の平均利益が大きかったことが理由です。
期間300の場合では、スプレッド考慮前の平均利益は5.58ドルでした。一方、期間15の場合ではスプレッド考慮前の平均利益が2.16ドルでした。スプレッドによって平均利益が1ドル減ると、それぞれの平均利益は
期間15  : 2.16ドル→1.16ドル 利益が46%減少
期間300 : 5.58ドル→4.58ドル 利益が18%減少
となります。
スプレッドの影響で利益が半分近く減ってしまった期間15に比べて、期間300では利益の減少が1/5程度にとどまっています。
このように平均利益が大きいほど、スプレッドや手数料の影響を受けにくくなります。

期間300は実践にも使えそうな、魅力的な売買ルールの可能性が感じられます。

パフォーマンスサマリーも見てみましょう。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=300 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時のパフォーマンスサマリー

こちらがスプレッド考慮後のパフォーマンスサマリーです。

スプレッド考慮前のパフォーマンスサマリーも再掲します。

スプレッド考慮の前後を比べると当然ですがパフォーマンスは悪化しています。
ただ、期間15の時に比べると悪化の程度は緩やかです。

手数料を考慮してもなお勝率、PFは高く、ドローダウンは小さいです。取引回数は約21か月で往復74取引と少なめなのは残念ですが、おおむね魅力を感じる数字です。
この売買ルールで複利再投資をした場合にどうなるのかも見てみましょう。

■収益再投資の検証
TradingViewではレバレッジ取引に対応しておらず、レバレッジ取引をした場合の損益推移グラフを検証することはできません。
TradingViewではレバレッジ1の場合に限ってのみ、損益再投資のシミュレーションが可能です。
ピラミッディング機能を使うことで疑似的にレバレッジ取引を検証する方法もあるのですが、残念ながら今回の売買ロジックではピラミッディングが発生する機会がないため、その方法も使えません。

ピラミッディングとは、乱暴に言うとナンピンの親戚です。ナンピンは損をしたときにさらに損失方向に取引量を上乗せする手法で、勝率は上がりますが破産リスクが上昇する手法です。逆に、利益が出ているときに限り取引量を上乗せする方法をスケールインと言い、勝率は下がりますが破産リスクも低下します。
通常、ピラミッディングはサイン継続時に取引量を上乗せするので、順張りの時はスケールイン寄りに、逆張りの時はナンピン寄りになります。今回の売買ロジックは逆張りなのでナンピンに似た振る舞いとなるはずです。しかしロジックの特性上ピラミッディングが機能しないストラテジーとなっています。このため、レバレッジ1の場合を確認することしかできませんでした。
レバレッジ1の場合の損益再投資の損益推移を見てみましょう。
まずは設定です。

 

資産比を選択して100%にします。初期費用はわかりやすく10000ドル(1万通貨)にします。
ピラミッディングは機能しないので1のまま。スプレッドとしてスリッページに5を入れます。
この条件で損益推移グラフを見てみましょう。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=300 Trade Reverseオン スプレッド1.0pips設定時の損益推移グラフ(損益再投資:レバレッジ1)

レバレッジ1なので、1万通貨固定の時の結果と比べてもあまり代わり映えしません。できればレバレッジ5~10くらいの場合も見てみたかったのですが、仕様なので仕方ありません。
見るべきところは純利益と最大ドローダウンの%です。
これまでの検証結果はすべて取引数量を1万通貨に固定した場合のものでした。収益率(%)やドローダウン率(%)の%の値には意味がありませんでした。一方、今回は損益再投資型なので、収益額やドローダウン額にあまり意味はなく、収益率(%)やドローダウン率(%)が重要になります。
損益率は2.93%です。100万円スタートなら29300円の利益になっていた可能性があるということです。また、最大ドローダウン率は0.33%です。これは極めて小さい値です。このように、損益再投資型の検証では率の値に意味がある点が有用です。
レバレッジを増やすと率の値は急速に大きくなっていきます。為替で、レバレッジ1でも21か月で2.93%もの利回りが出る売買ルールはかなり優秀だと思います。

詳細は省きますが、エクセルを使って簡単に確認してみたところ
レバレッジ3なら8.7%
レバレッジ5なら約14.9%
レバレッジ8なら約24.7%
レバレッジ10なら約31.7%
レバレッジ20なら約71.4%
の利回りになっていました。これぞ複利計算の暴力ですね。
グラフはこのようになります。
縦軸は100万円スタート時の資産推移、横軸はトレード回数です。

このように、右肩上がりに損益推移するような売買ルールで損益再投資をすると、凄まじい利益をたたき出すことが多いです。
とはいえ、今回のストラテジーは逆張り型のロジックなので最大ドローダウン以上の含み損を抱えることがあります。場合によっては証拠金がなくなって強制決済ということもあり得ます。したがって、あまり大きなレバレッジをかけるのは危険です。

さて、4回にわたってチャネルブレイクアウトを応用したちょっと特殊な逆張り戦略をご紹介してきました。いかがでしたでしょうか。

今回一連の記事でご紹介したのは逆張りショートの売買ロジックです。とても面白いロジックだったので今後も積極的に研究していこうと思います。
今後は他の時間足や他銘柄への適用、逆張りロングの場合の検証結果などもご紹介したいと思います。