チャネルブレイクアウト戦略でEUR/USDを攻略する【後編】

前回の記事では公開ストラテジーの「Breakout Range Long Strategy Backtest」がユーロドルの1時間足に対して非常に幅広い期間設定で有望そうな売買ロジックであることが確認できました。

今回は期間を2つピックアップしてパフォーマンスサマリーを詳しくご紹介します。
短期設定からは期間15を、超長期設定からは期間300を取り上げます。

まずは期間15からご紹介します。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=15 Trade Reverseオン の損益推移グラフ
前回の記事でもご紹介した既出情報ですが、わかりやすさを考慮して再掲します。

損益推移グラフの形状がとても魅力的ですね。
次に、本題のパフォーマンスサマリーです。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=15 Trade Reverseオンのパフォーマンスサマリー

まず、サマリーで一番最初に注目したいのはロングとショートの両方で同じくらい利益が出ているかどうかです。これは非常に重要なポイントです。どちらか片方に利益が集中していると、単にトレンドに乗っただけに過ぎないという場合があるからです。そういう売買ルールは買って放置、あるいは売って放置するのと大差ありません。
ただ、今回の売買ロジックはもともとがロング限定のストラテジーで、その売りと買いをそっくりそのまま入れ替えたものです。つまり、ショート限定のストラテジーになっています。
このため、売りと買いの利益のバランスを見ることは残念ながらできません。

ショートのみの損益であることを踏まえて、各項目を見ていきましょう。

・純利益は1529ドル:総利益4411ドル、総損失2882ドル
損失に対して約1.5倍の利益が出ており、理想的です。

・最大ドローダウンは222ドル
純利益1529ドルに対して最大ドローダウン222ドルなので、最大ドローダウンは総利益の約7分の1です。
一番資金が減った局面でも、総利益に対してわずか7分の1以下の損失しか出なかったということです。
ただし、逆張り戦略なので最大ドローダウンを上回る額の一時含み損が出ている可能性はあります。
最大ドローダウンはあくまで決済ベースの値です。

・プロフィットファクターは1.53
良好な数字だと思います。

・平均トレード利益は2.11ドル
1枚あたり平均230円なので1回あたりの利益はとても小さいです。
これはスプレッド考慮前の値です。なるべく実質スプレッド(※提示スプレッドではなく、約定ベースのスプレッド)が小さい環境が重要になります。

・勝率は59.8%
勝率は高めです。ただ、勝率は単体ではあまり意味がなく、プロフィットファクターやペイオフレシオとセットで評価する必要があります。

・平均勝ちトレードは10.2ドル、平均負けトレードは10.0ドル
勝率が高めでありながら、勝ち額と負け額がほぼ1:1で、勝ちがわずかに上回っています。
これは相当すごいことです。
この売買ルールのペイオフレシオは1.02です。
勝率を考慮するととても高い値だと思います。

ペイオフレシオについて…

ペイオフレシオ=平均利益額÷平均損失額
で算出します。

ペイオフレシオが1未満の時は逆数を見ます。
今回のペイオフレシオは1.02です。
負けるときは平均100円のマイナスで、勝つときは平均102円のプラスということです。
そのうえ勝率が約60%なので、直感的にも利益が積みあがっていくのが想像しやすいと思います。

・トレードにおける平均バー数は3
前回の記事でも詳しくお話しした通り、このストラテジーではパラメータの計算期間にかかわらず平均バー数はほぼ3で安定しています。

エントリーもクローズも始値を使うので、3本のローソクを使うということは
1本目のローソクの始値でエントリー→3本目のローソクでクローズ
ということです。つまり平均トレード時間は2時間です。
1時間足を使いながらも平均でたった2時間しか保有しません。
保有時間が長ければ長いほど、利益も損失も大きくなりやすいです。
平均2時間でトレードが終わるというのはリスクがかなり低めと言えると思います。

・勝ちトレードの平均バー数は2
・負けトレードの平均バー数は3

勝ちトレードに至っては1時間でトレードが終わっています。
長引くと負けやすいと言えるかもしれません。
この辺りは逆張り型ならではの挙動といえそうです。

負けトレードの時間が長引く場合、損失が大きくなりやすいリスクを持っています。
ただ、平均で3本(しかも始値エントリー→始値クローズなので2時間)しか使わないというのはかなりリスク抑えめになっていると思います。

・利回り
約21か月で利益は1529pipsです。
1万通貨につき1529ドル=168,000円の利益。

証拠金15万円で1万通貨を運用した場合、21か月で利回り112%になります。
かなり優秀な部類だと思います。

以上、期間(LookBack)=15の場合のパフォーマンスサマリーでした。
ボリンジャーバンド戦略の時は使うのをためらうようなパフォーマンスが多かったですが、
この結果は実際に使ってみたいくらいの魅力があります。

次回の記事で、スプレッドや収益再投資も考慮してさらにこの売買ルールの可能性を掘り下げてみましょう。

その前に、次は期間300をご紹介します。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=300 Trade Reverseオン の損益推移グラフ

この売買ルールは期間8から良好な損益推移グラフを描いており、期間100を超えてもなお良好な形になっていました。期間を延ばす平均トレード利益が大きくなる傾向があり、期間を300まで伸ばしてもその傾向は続きました。上掲の通り期間300の損益推移グラフは見事というほかない素晴らしい形です。ユーロドルでこんなふうに利益を積み立てられたら間違いなく天才でしょうね。
つづいてパフォーマンスサマリーです。

・「Breakout Range Long Strategy Backtest」EUR/USD 1時間足 LookBack=300 Trade Reverseオンのパフォーマンスサマリー

サマリーで一番最初に注目すべきはロングとショートの両方で同じくらい利益が出ているかどうかですが、先ほどお伝えした通りこの売買ロジックはそもそもショートからしかエントリーしません。
ショートの損益であることを踏まえて、各項目を見ていきましょう。

・純利益は413ドル:総利益611ドル、総損失198ドル
損失に対して3倍以上もの利益が出ており異常です。

・最大ドローダウンは34ドル
純利益413ドルに対して最大ドローダウンはたったの34ドル。
なんと、最大ドローダウンは総利益のわずか12分の1です。

最も資金が減った局面でも、総利益に対して12分の1以下の損失しか出なかったということです。
ただし、逆張り戦略なので最大ドローダウン以上の含み損が一時的に出ている可能性はあります。
先ほどもお伝えしましたが、最大ドローダウンはあくまで決済ベースの値です。

・プロフィットファクターは3.08
ちょっと異常な数字です。3を超えてたらバグを疑ったほうがいいくらいです。
ただ、トレード回数が74回とかなり少ないので
そのせいでこんな値がたまたま出ただけかもしれません。
ともあれ、高すぎるPFにはまず疑いの目を持つ姿勢が重要です。

TradingViewの公開ストラテジーにはPFが10や20を超えるトンデモストラテジーが大量にありますが、それらのほぼすべてが未来の値を採用してトレードしているリペイント型ストラテジーです。リペイント型ストラテジーでぬか喜びして実践に使って大損する人が後を絶ちません。
くれぐれもお気を付けください。

本ストラテジーは少なくともリペイントはしません。
但し、全記事のフッターでもしつこくお伝えしている通り、あらゆるトレードは100%自己責任でお願いします。

・平均トレード利益は5.58ドル
期間15の平均トレード利益が2.11ドルだったので、大幅な向上です。
1枚あたり平均613円。1回あたりの利益は悪くありません。
これはスプレッド考慮前の値ですが、スプレッドが0.5pipsなら往復で(※片道ではありません。スプレッドは片道ごとにかかるのではなく往復の値と理解すべきです)、1万通貨当たり55円相当になります(1pips=1ドル=110円とした場合)。

平均利益が2.11ドルの時に比べれば平均利益5.58ドルはスプレッドの影響がずいぶん小さくなります。それでも、なるべく実質スプレッド(※提示スプレッドではなく、約定ベースのスプレッド)が小さい環境を選びたいところです。

・勝率は67.6%
勝率はとても高いです。ただし、勝率は単体ではあまり意味がなく、プロフィットファクターやペイオフレシオとセットで評価する必要があります。

・平均勝ちトレードは12.2ドル、平均負けトレードは8.6ドル
勝率が高めでありながら、勝ち額が負け額を大きく上回っています。
これは相当すごいというか、異常です。
この売買ルールのペイオフレシオは1.418です。
勝率が50%を超えるとペイオフレシオは1を切ることが多いので、高勝率を考慮すると異常なほど高い値だと思います。

ペイオフレシオについて…

ペイオフレシオ=平均利益額÷平均損失額
で算出します。

ペイオフレシオが1未満の時は逆数を見ます。
今回のペイオフレシオは約1.42です。
負けるときは平均100円のマイナスで、勝つときは平均142円のプラスになっているということです。
そのうえ勝率が約67.6%なので、直感的にもどんどん利益が積みあがっていくことが想像しやすいと思います。

・トレードにおける平均バー数は3
期間が15の時と同じく、平均バー数は3。
期間15でも期間300でも平均トレード期間が変わらないというのは相当珍しく、特殊です。

とはいえ、売買ロジックを理解すればなるほどと思います。
このロジックはとても興味深いです。

期間15の時と同じく、
・全体の平均バー数は3
・勝ちトレードの平均バー数は2
・負けトレードの平均バー数は3

です。
すべて期間15の時と同じなので説明は割愛します。

システムトレードでは計算期間が長いほど安定しやすい傾向がありますが、それに伴って1往復に要する平均トレード時間が長くなり、リスクも大きくなりやすいです。
期間を長くしてもトレード時間が長くならないのは相当すごいことです。

・利回り
約21か月で利益は423pipsです。
1万通貨につき423ドル=46,530円の利益。

証拠金15万円で1万通貨を運用した場合、21か月で利回り30%になります。
ちょっと物足りないかもしれませんね。
勝率やPFを信じてレバレッジを上げれば利回りも向上しますが、
逆張り型でハイレバは高リスクなのでお勧めできません。
ストップを置けばそれなりにリスクコントロールはできるかもしれません。

以上、期間(LookBack)=300の場合のパフォーマンスサマリーでした。
非常に魅力的な結果なので、もうちょっと様子を見たうえで実際に試してみようかと思います。

こちらの売買ルールについても、次回の記事でスプレッドや収益再投資も考慮してさらに掘り下げてみましょう。

今回は期間を2つピックアップしてパフォーマンスサマリーをご紹介しました。
とても有望と言えそうです。
次回の記事では実践を考慮してスプレッドや損益再投資を検討してみます。