
前回の記事ではユーロドル(EUR/USD)の1時間足にボリンジャーバンドの逆張り戦略を適用しました。その結果、良好な損益推移グラフが出るパラメータ設定がいろいろ見つかりました。しかし、パフォーマンスサマリーをじっくり見てみると欠点が見つかりました。それは、売買1往復にかかる平均時間が長すぎることと、ドローダウンを大きく上回る含み損を抱えていたことです。そこで今回はもっと短い時間間隔の売買で有望な設定を見つけるためユーロドルの15分足でボリンジャーバンド逆張り戦略を検証してみます。
■テスト手順
使用データと対象期間は2019年4月1日から2019年9月11日までの、ユーロドルの15分足です。取引量は1万通貨固定です。まずは手数料やスプレッドを無視して検証します。
■検証
まず初めに、売買ルールのデフォルト設定にもなっているボリンジャーバンドで定番の期間20・標準偏差σ=2の損益推移グラフを見てみましょう。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間20の損益推移グラフ
このデフォルトのパラメータ設定ではだいたい良
くない損益推移グラフが出てきますが、今回はそこまで悪くない結果です。
もしも実際のトレードとしてこの成績を出すトレーダーがいたら十分な腕前だと思います。ただ、システムトレードとして実践に使うには心もとないです。
もっといいグラフを見つけるため、いつものように期間を短くしたり長くしたり、いろいろ試してみましょう。
・期間を増やす方向
期間を増やせば増やすほど結果がどんどん悪くなっていきます。150まで見てみましたが全滅です。また、期間が長くなるほどトレード回数が減少し、1回あたりのトレード時間が長引いてしまします。トレード時間が長引くリスクを解決するために15分足で検証しているので、あまり期間を長くするのは本末転倒の方向に走っているのと同じですね。
・期間を減らす方向
期間を20から1ずつ減らしていきました。
どれもイマイチな中、1つだけいい損益推移グラフが出てきました。
ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間8の損益推移グラフ
これは良好ですね。しかし、前後の期間=7や期間=9の損益推移グラフはいい結果といえるほどではありませんでした。
ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間7の損益推移グラフ
ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間9の損益推移グラフ
前後の期間が良くなくて、ピンポイントに期間8だけがいいというのは安定性に問題があるように思います。わずかの差で、たまたま大きく利益が出るトレードが加わり、かつたまたま大きく損が出るトレードがなくなって損益推移グラフが良くなった疑いを持ってしまいます。偶然の産物である可能性も高そうです。期間にある程度の幅を持たせても似たような形になるものでないと、使うのはちょっと怖さがあります。
これまでの検証を振り返ってみると、σを変更するのがよさそうです。仮想通貨に比べればユーロドルは圧倒的に低ボラティリティなので、非常に大きな値動きであることを意味するσ=2を目安に売買するには不向きな気もします。σ=1.5とσ=1.0も調べてみましょう。
■標準偏差σを変える
ということで、標準偏差σを1.0、1.5の場合で、それぞれ期間を色々変えて調べてみました。
あまり期間を長くしすぎても意味がなさそうなので、今回は50までを調べてみました。
その結果…。
なんと、いい感じの損益グラフは一つも見つかりませんでした!
予想外の出来事です。しかし、これでは面白くないのでもう少し粘ってみます。
なにをしたかというと、σをさらに小さくしてみました。
すると、面白い結果が見つかりました。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.75、期間39の損益推移グラフ
これはほぼ一方的に減っているので、ロジックは同じままで売買だけを入れ替えれば利益になります。
また、この前後の期間も似た形の損益グラフになっていました。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.75、期間38の損益推移グラフ
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.75、期間40の損益推移グラフ
これはなかなか悪くないです。しかし2/3くらいの位置を過ぎたあたりで大きく下がってから再び上がっているところが気になります。
σをもっと小さくして、σ=0.5の場合を調べてみましょう。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.5、期間46の損益推移グラフ
これはとてもいいですね。
また、似たような形になる期間が幅広く、期間42から48まで大体この形になっています。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.5、期間42の損益推移グラフ
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.5、期間48の損益推移グラフ
このように設定期間の幅に余裕があると安心です。
ただし、期間49では形が悪化して、先ほどご紹介したσ=0.75、期間39の時のように途中で大きく下がってから持ち返しています。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.5、期間49の損益推移グラフ
期間50でもこのような形になりました。
ともあれ、期間42から48までは大体同じ形になっているので、期間46は安定感がありそうです。ということで、σ=0.5、期間46についてもう少し詳しくご紹介します。
・ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=0.5、期間46の損益推移グラフ
このロジックで売買をそっくり入れ替えると、損益グラフは上下反転したものになります。
このグラフを上下反転させると
こうなります。
白い部分が利益です。これは相当優秀な損益推移グラフです。
できれば、この売りと買いを入れ替えた場合のサマリーもご紹介したいですが、売買入れ替え機能がないストラテジーなので自力でプログラムを組む必要があります。試しに組んでみたものの、何らかのエラーがあるようでこのような形のグラフにはなりませんでした。なので、上記のグラフまででご容赦ください。
パフォーマンスサマリーを一つもご紹介できないのは寂しいので、参考情報として最初のほうでご紹介したσ=2、期間8のパフォーマンスサマリーをせめてご紹介します。
■ユーロドル 15分足 「Bollinger Bands Strategy directed」σ=2、期間8の損益推移グラフとパフォーマンスサマリー
たくさんグラフが出てきて何がなんだか混乱してしまうので、まずは損益グラフを再掲します。
次に、こちらのパフォーマンスサマリーを掲載します。
・パフォーマンスサマリーの短評
ロングとショートの両方でバランスよく利益が出ています。
1万通貨を5か月ちょっと売買して+949.6ドル=949.6pipsはかなりの好成績だと思います。
最大ドローダウンは141.7ドルで、総利益949ドルに対して6分の1以下と、相当優秀です。
プロフィットファクターは1.5で優秀です。
勝率は63.7%で高めです。
ただし、勝ちトレードの平均は+11.85ドル負けトレードの平均は-14ドルです。
勝ちトレードは平均23本=5時間45分
負けトレードは平均45本=11時間15分で
負けトレードのほうが2倍くらい長い時間がかかっています。
これは1発の負けが大きくなるコツコツ→ドカン型であることを示唆しています。
逆張り型はこのようなパターンが多いです。
また、含み損はドローダウンに含まれないため、含み損も含めたドローダウンはもっと大きくなっている可能性はあります。逆張り型は含み損が大きくなりがちです。
パフォーマンスはかなり良好ですが、コツコツドカンと含み損、そして期間設定の幅が狭い(というかピンポイントで期間8のみ)であることには注意が必要です。
■まとめ
残念ながらユーロドルの15分足に対してはボリンジャーバンドのストラテジーではあまりいい結果を見つけ出すことはできませんでした。
しいて言うならσ=2、期間8は良好ではありましたが、期間が±1になると結果がかなり大きく変わってしまうのが不安材料です。
σ=0.5、期間46の設定で売買を入れ替える=順張りにする 場合では魅力的な損益グラフになりますが、筆者のスキル不足のためプログラムを組んで検証することができませんでした。
やはり為替は手ごわいですね…。今回はイマイチな結果ですみません。
もっといい結果をご案内できるように頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。