EUR/USDの一時間足にボリンジャーバンドでアプローチする【後編】

前回の記事でEURUSDの1時間足にボリンジャーバンドの逆張りストラテジーである「Bollinger Bands Strategy directed」を適用し、有望なパラメータ設定として「σ=2・期間120」と「σ=2&期間202」の損益グラフやパフォーマンスサマリーをご紹介しました。
一見非常に有望そうな結果が出ましたが、この結果をよく見るといくつか怖い落とし穴があることに気づきます。今回の記事ではそのあたりについてご紹介します。
まず、それぞれのパフォーマンスサマリーを再掲します。

・σ=2、期間120のパフォーマンスサマリー

・σ=2、期間202のパフォーマンスサマリー

・σ=2、期間120のパフォーマンスサマリーについて
ロングとショートの両方で利益が出ていますが、ショートに利益が偏っており、ロングの利益の2.5倍くらいになっています。両方でバランスよく利益が出ているのが理想的ですが、ちょっとこの利益のバランスの悪さは気になります。

また、平均トレード時間がかなり長いです。
平均バー数は205本なので、1往復に205時間も使っています。
さらに、勝ちトレードの平均バー数が159本なのに対し、負けトレードの平均バー数は312時間もあります。

1年8か月で50往復しかトレードしていないというのはちょっと試行回数が少なくて安定性が心配です。

・σ=2、期間202のパフォーマンスサマリーについて
結果だけざっくり見ると非常に優れた売買ルールのように思いますが、気になる点がいくつかあります。
まずプロフィットファクターが異常に高すぎること。ここまでプロフィットファクターが高いと、単にパラメータ設定の妙により、都合の悪いマイナストレードがたまたま除外されているだけの可能性もあります。期間130以上では大体同じような形の損益推移グラフになっていたので、期間が130を超えると、「大きな損失が出る、ある1往復のトレード」をうまく回避できるようになる、ということが起こっているのではないかと推察します。

また、こちらも期間130の時と同様にロングとショートの両方で利益が出ていますが、やはり期間120の時と同様にショートに利益が偏っており、利益額はロングの2倍くらいです。両方でバランスよく利益が出ているのが理想的ですが、利益のバランスが若干悪いです。

そして平均トレード時間は期間120の時よりさらに長いです。パラメータの計算期間を長くするとトレード時間も伸びるので、こうなるのはある意味当然の結果ですが、本当に1往復のトレード時間が長いです。
見ているのは1時間足で、1トレード当たりの平均バー数が241本なので、1往復に241時間も使っていることになります。
240時間なら丸々10日だな、と思うかもしれませんが、FXは週末止まっていてローソクが発生しないため、241時間は10日間ではなく10営業日です。つまり、1往復のトレードに約2週間もかかっていることになります。

さらに、勝ちトレードの平均バー数が198本なのに対し、負けトレードの平均バー数は419本もあります。負けるときのほうがトレードが長引くという傾向は逆張りロジックではよく見られます。ただ、トレード時間が長いほどレートの振れ幅が大きくなるので、利益の額も損失の額も大きくなりやすいです。このため、勝ちトレードの平均時間よりも負けトレードの平均時間のほうが長いというのはあまりよくない傾向です。なぜかというと、負けトレードのトレード期間が長引くと、たった1度の負けでも、それまでの勝ちを覆してしまうくらいの大きな負けにつながってしまう可能性が高いためです。

加えて1年8か月で41往復しかトレードしていないというのは試行回数が非常に少なくて安定性が心配です。たった41回のトレードでは、たまたま勝ちに偏って、たまたまうまくいったトレードの寄せ集めになったというだけかもしれません。

単に損益グラフや勝率、ドローダウン、プロフィットファクターだけ見るととてもいいパフォーマンスのように見えますが、1往復のトレード時間やトレード回数、勝ちトレード時間と負けトレード時間まで比べてよく見て背景を熟考すると、損益グラフからは見えない落とし穴やリスクが少しずつ見えてきます。その点、私はこの売買ルールはちょっと使いにくいです。

さらに注意点を加えると、通常はバックテストのドローダウンには含み損が含まれていません。TradingViewもそういう仕様です。つまり、あくまで決済損益ベースでドローダウンが計算されています。このため含み損まで考慮した実質的なドローダウンはもっと大きくなっている可能性が高いです。
期間202では負けトレードの平均が419本=17.5営業日=約3.5週間 です。平均で3.5週間なので4週間や5週間のこともあるでしょう。それだけ保有し続けて負け決済をするとなると、途中の含み損は相当な額になっているものと思います。
負けのトレードが長引くのは逆張りロジックの欠点ですのでどうしようもない面もありますが、逆張りトレードでは最悪の一トレードが破産リスクにつながります。逆張りロジックを使う場合はもっとトレード時間が短いものを選んだほうがいいかなと思っています。

もう1点、為替のテストをする際に1時間足で2年弱ではテスト期間が短すぎます。TradingViewの仕様なので仕方ないのですが、2年弱であれば単にトレンドに乗っただけでもそれなりの利益が出てしまいます。このあたりの懸念はショートとロングの両方でバランスよく利益が出ていることを確認できればある程度はクリアできますが、先ほどご紹介したように利益がショートに偏っており、あまりバランスが良くありません。
バランスよく利益が出ているにしても、期間が長いに越したことはありません。ユーロドルの1時間足なら最低でも10年は見たいです。理想的にはサブプライム前の2007年1月くらいからチェックできたほうが好ましいです。
一方、仮想通貨の場合はあまり長く見ても意味がないように思います。2018年1月より前とそれ以降では別の商品化というくらい違う値動きをするようになってしまったことに加え、数年で単価が変わりすぎているためです。為替のメジャー通貨ペアが10年で2倍になることはめったにありませんが、仮想通貨は数年で数千倍、数万倍になっています。ただ買って放置すれば利益が出る期間が長すぎたため、あまり長い期間を見ても意味がないかなと思っています。

最後に、今回のテスト期間である1年8か月間の全期間の売買サイン入りのチャートをご紹介します。

2018年1月~10月

2018年10月~2019年7月

2019年7月~

赤矢印は売りポイント、青矢印は買いポイントです。
おおむね売りと買いのポイントが的確にとらえられていますが、2018年1月~10月のチャートの4つ目の買いポイント(青矢印)に注目してください。この区間を拡大します。

4つ目の買いポイントで買って、次の売りポイントで買いを決済するまでの間に一度ものすごい含み損を抱えています。
この区間は、決済ベースでは440ドル程度の損失になっていますが、含み損は最大700ドル以上にもなっています。その後持ち直して決済ベースでは440ドルの程度の損失で済んでいますが、実際には700ドル以上のリスクを抱えていたということです。そしてこの値は最大ドローダウンの数字には反映されません。順張りロジックでは含み損が最大ドローダウン以上に膨らむことはそこまで多くありませんが、逆張りロジックでは含み損が最大ドローダウンを上回ることは珍しくなく、とくに高勝率の設定やトレード期間の長い設定ほどその傾向が強くなります。この売買ルールでは含み損が700ドルくらいで済んでいますが、逆張りロジックの損失は無限に膨らむこともあり、一発退場のリスクを背負うことになります。逆張りロジックでは「最悪のドカンが来る前にコツコツで逃げられるか」という勝負をしているともいえるかもしれません。筆者は逆張りは怖いので、使うにしても損切ラインを決めます。損切を小さくとると勝率が下がって逆張りロジックの長所がなくなってしまうので、それなりの幅を取らないといけません。かといって大きくとりすぎても、損切を設定しない場合よりも大きく損をしてしまうこともあります。この辺りのさじ加減はかなり難しいです。
できれば順張りロジックで勝てる売買ルールを探したいところです。逆張りも魅力的で捨てがたいですが、一歩間違うと破産に直結する手法でもあるので、リスクを把握しないで逆張りロジックを使うのはとても危ないです。逆張りロジックを使う場合はもっとトレード回数の多い、決済間隔が短めの売買ルールを使いたいと思っています。

そこで、次回はEURUSDの15分足で「Bollinger Bands Strategy directed」の有望な売買ルールを探ってみようと思います。