
2019年6月に始まった新しい仮想通貨取引所DeCurret
DeCurretは2019年の6月にサービスが始まったばかりの新しい仮想通貨取引所です。
取引方式は板取引ではなくレート提示形式となっています。
DeCurretの出来高は?
取引所の出来高が大きいほどトレーダーにとっては有利な取引環境になるため、仮想通貨取引所を選ぶ際に出来高はセキュリティの次くらいに非常に重要な要素です。
しかしDeCurretではレート提示方式となっており、残念ながらDeCurretの出来高は不明です。
DeCurretでアビトラをしたい場合は?
残念ながら記事執筆時時点ではDeCurretはスプレッドが非常に広く、販売所と同レベルです。このレベルのスプレッドだとアビトラは困難です。
DeCurretはリップル(XRP)の取引が可能
日本ではビットコインに次ぐ人気があるリップルですが、DeCurretではリップルの取引が可能です。
ただし、問題はスプレッドの広さです。記事執筆時点では特にマーケットは荒れていませんが、リップル現物のレートは
Ask 34.7円
Bid 32.8円
と、なんと1.9円ものスプレッドが開いています。これでは販売所と変わりません。とても不利な取引環境なので残念ながら現状ではオススメできません。
リップルを取引したい場合はビットバンク、LIQUID(QUOINE)、GMOコインを使いましょう。ビットポイントでもリップルの取引ができますが、2019年7月12日の仮想通貨流出事件を受け、記事執筆時点ではリップルを含む全取引が停止されています。
いい仮想通貨取引所の要件を評価
筆者が考えるいい仮想取引所の条件は次の通りです。
①セキュリティの高さ ②スプレッドの小ささ ③板の厚さ ④レバレッジ取引ができるかどうか ⑤手数料の安さ ⑥経営体の強さ
DeCurretについてこれらの要素を評価します。
☆DeCurretのセキュリティは?
仮想通貨はその性質もあって、セキュリティ面に問題を抱えています。ご存じの通り日本を含め世界各地の仮想通貨取引所はこれまで何度もハッキングや仮想通貨盗難などの問題が発生しています。セキュリティは常に、すべての仮想通貨取引所の課題になっており、トレーダーにとっても仮想通貨取引所のセキュリティは最重要事項です。
しかし、取引所のセキュリティ周りの内部体制がどうなっているのかは外から把握することができないので、DeCurretのセキュリティがどうなっているかは評価が難しいところです。
そこで、外部から客観的にサイトのセキュリティを計測する方法のひとつに、observatory.mozillaというサービスがあります。Mozillaは20年以上前からブラウザなどのウェブアプリケーションを開発している歴史ある専門業者です。このサービスを使うと誰でもあらゆるサイトのセキュリティ評価の採点が自動でできます。このサービスでのDeCurret の採点結果はこちらです。
https://observatory.mozilla.org/analyze/www.decurret.com
この点数は随時変わります。DeCurretの過去の得点履歴を見る2019年の3月時点で75点でした。、記事執筆時点の点数75点で、評価はBでした。この得点は非常に高い得点です。
国内取引所には記事執筆時時点で0点の取引所が2か所あります。取引所以外ではセキュリティ対策を標ぼうしている業者が0点のこともあり、日本の省庁も0点のところは珍しくありません。銀行口座にログインできるメガバンクの公式サイトが1ケタ得点だったりします。
筆者調べではこれまで調べた国内仮想通貨取引所の中での最高得点はビットバンクの70点で、次いでLIQUID/QUOINEが65点でした。これらを上回る高得点です。
ちなみに筆者が知る限り最高得点の取引所はBitMEXで、調査時点では105点という異常なほどの高得点です。
参考までに、東京大学は15点、googleは50点です。内閣サイバーセキュリティセンターは60点で、国内の省庁の中では突出して高いです。
このような評価基準なので75点は素晴らしい高得点です。基本0点になるような厳しい評価です。ただし、この評価基準はセキュリティに対する様々な評価手法の1つに過ぎません。従って、この得点が高いからといって直ちに高セキュリティであるとか、逆に評価点が低いからといって直ちに低セキュリティということは言えないでしょう。
とはいえ、この得点が高いほうが様々な要素を幅広く気にした対応がされていることが予想されるので、筆者は個人的にこの採点もセキュリティ面の安心材料の一つとみてそれなりに気にしています。その点、75点はすさまじい高得点で、プラス評価していいと思います。
いずれにしても、この得点よりはるかに重要なのは顧客分の仮想通貨がちゃんとコールドウォレットで管理されているかどうかだと思います。本当にコールドウォレットで管理されているかどうかは外からはわからないので「信じるしかない」という世界になります。
仮想通貨取引所を使うことは、程度の大小こそあれ、不安と戦うことは避けられません。
DeCurretのセキュリティについては
https://www.decurret.com/risk-and-security/
に概要が書かれています。顧客分仮想通貨はコールドウォレットで分別管理されているとのことで、マルチシグネチャーも導入しているようです。
このようなセキュリティ体制が明記されているのはユーザーにとって安心材料の一つになりますし、ありがたいことだと思います。
☆DeCurretのスプレッドは?
スプレッドはトレーダーにとって手数料とほとんど同じ存在です。トレーダーも取引所も、スプレッドが広くて得することは何ひとつとしてありません。より有利なスプレッド条件を求めると出来高が重要な指標になりますが、残念ながらDeCurretのBTCは出来高が不明で、スプレッドはとても広いです。
記事執筆時時点でビットコイン現物は
購入レート:1,044,740JPY
売却レート:1,017,721JPY
となっており、なんと27,000円ものスプレッドが開いていました。27,000円は利益として十分すぎるほどの値幅です。これが取引1往復のたびに実質的な手数料としてかかるとなると、極めて不利な取引環境と言わざるを得ません。
このため、現状ではメインの取引所として使うのは難しいと思います。また、レート提示方式ではスプレッドを小さくしたくても限度があり、板取引方式のようにスプレッドを小さくするのは難しい面もあります。
レート提示方式にも「全量が同じレートで約定する」というメリットはありますが、ここまでスプレッドが広いと厳しいものがあります。
やはり仮想通貨の魅力は板取引だと筆者は思います。当初板取引がなかったGMOコインは板取引を開始し、同様にSBIVCも板取引の準備を進めています。ぜひDeCurretも板取引の追加を検討してほしいところです。
☆DeCurretの板の厚さは?
板が厚い取引所ほど一度により大きな取引ができるので、資金力のある大口トレーダーが参加しやすくなり、さらに取引量が増えて板も厚くなっていくという正のフィードバックをもたらします。しかし、DeCurret はレート提示方式で板はありません。前述の通り、現状ではスプレッドが非常に不利です。ユーザーが増えるとスプレッド条件も改善されていくことがあるので、スプレッドが縮まる日まで気長に待つのが得策だと思います。
☆DeCurretはレバレッジ取引できる?
DeCurretは現物取引のみでレバレッジ取引ができません。
☆DeCurretの取引手数料は?
DeCurretの取引手数料は無料です。DeCurretでは現状スプレッドは極めて大きめですが、その代わり手数料は無料です。板がなく、レート提示のみで、スプレッドがものすごく広く、手数料が無料ということで販売所とほぼ同じ形です。
また、仮想通貨取引所の手数料はよく変更されるので、常にご確認されることをお勧めします。DeCurretの最新の手数料はこちらです。
https://www.decurret.com/service/fees/
☆経営母体が強力であるか
仮想通貨取引所は上場企業の関連会社であることがあります。DeCurretは日本の名だたる大企業19社が共同出資して作られた会社で、資本金はなんと86億円もあります。
ハッキングや盗難などの大きな問題が起こったとき、補填などで頼れるバックがいるのは安心要素につながりますが出資者19社のうち1社だけでも補填できそうなほど強力な出資者です。もちろん上場企業に関連していないからと言って補填がなされないわけではなく、コインチェックもZAIFもの補填を行いましたが、やはり上場企業の関連会社であることは大きな安心要素の一つだと思います。その点、DeCurretは個人的には「ここでもカバーできないレベルのトラブルなら誰にもどうしようもない」くらいの安心感があり、筆者の中では安心感は断トツ一位です。
DeCurretのメリット・デメリット
〇手数料が無料
〇運営母体が超強力
〇mozillaのセキュリティ評価点が非常に高い
〇セキュリティ体制が明記されている
×APIが使えない
×スプレッドが非常に大きい
×板取引ではない
DeCurretのまとめ
DeCurretは現状ではスプレッドが大きすぎて取引環境が不利と言わざるを得ません。また、板取引ではなくレート提示方式のみで取引所形式ではなく、APIも使えません。一方、経営母体が強力で、セキュリティ体制もかなりしっかりしているように思えます。Mozillaのサイトセキュリティ採点でも国内取引所で最高点を出しました。
スプレッドの大きさゆえに取引する環境としては厳しいですが仮想通貨の保管先としては好ましい取引所の可能性があります。長期保有する際の保管場所としての利用はアリかもしれません。希望としてはぜひ取引所方式を採用していただき、レバレッジ取引もできるようにしていただきたいところです。個人的には「条件が異なる様々な場で板取引が可能であること」は仮想通貨が持っている重大な価値と可能性の一つだと思っています。せっかくの安心感もスプレッドで台無しになっている感があります。実用レベルのスプレッドに縮まれば多くのトレーダーにとってメイン取引所の有力候補になるでしょう。DeCurretの今後に大いに期待しています。
(記事の内容は執筆時時点の筆者調べの情報です。最新情報は各位ご確認ください。)