対キーエンス株ロジック最終回 理論上は60万倍超!解析で見えてくる銘柄固有の傾向

知る人は知っていたであろうキーエンス株の騰落傾向

一連の記事で解析対象にした12.5年間の期間中にキーエンスの株価は右肩上がりで6倍以上になっていました。
それにもかかわらず、
・全期間ひたすら毎日始値買い→終値売りを繰り返した場合の損益%の合計値は-89.8%
・全期間ひたすら毎日始値売り→終値買いを繰り返した場合の損益%の合計値は+89.8%
となっています。

何かおかしくないでしょうか。

12年半前に1度だけ買ってそのまま放置していたら+500%以上になっていた一方で、日計りで毎日買って寄りで売ることをひたすら繰り返していたら、なんと負けていたのです。
つまりザラバに下げが集中していたということです。

このことから、キーエンスの株価は少なくとも過去12.5年間、

取引停止期間中 = オーバーナイト = 「見えないローソク」 = 当日終値 → 翌日始値

のタイミングに大きく偏って株価を上げてきたということがわかります。

これは、優良な成長株であってもどこかでいったん下げて調整する必要はあるということを示唆しているのかもしれません。
そしてその下げのタイミングがなぜかザラバに大きく偏っている。
その偏った下げの分を大きく上回る上げは、第2回で解説した「見えないローソク」に集中してきたものと推測されます。
ただし、残念ながらなぜそうなってきたのかは不明です。
機関投資家の利確なんかも影響していたりするんでしょうかね。
夜に大きく上げたら、次の日の日中にいったん利確しておきたいということもあるかもしれませんし。
一つ言えるのは、エクセルでチマチマと解析することでこういう法則(というか傾向)みたいなものが見えてくることがわりとよくあるということです。
明らかに上げトレンドの銘柄なんだから、とにかく買えば勝てると思ってしまいがちですよね。
しかし多くの株価は相当派手な不連続グラフになっており、そう単純な話でもないのです。
このことはただ視覚的にチャートだけを見ていてもなかなか気づけません。
第1回で解説した「Δ始値」や第2回で解説した「見えないローソク」みたいなものはチャートにはあまり視覚的には表されにくいものだからです。
一方、AIに「Δ始値」や「見えないローソク」に注視するように仕向けて画像解析やラベリングをさせればすぐに分別してくれるでしょう。
個人的には、AIは人工知能というより自動ラベリング装置、オートラベラーか何かだと呼んだほうがより実態に即していると思っています。
なので、このような分別・仕訳・関連付けは十八番でしょう。そんな高速自動戦闘機に対して人力で立ち向かっても瞬殺されそうですね。
そうなってくると「Δ始値」や「見えないローソク」の存在に気づいてAIを仕向けることに人間の役割がうつるかもしれません。
トレードにAIを使うのが当たり前になったら、トレーダーにはAIのチューニングの技術が問われそうです。

こういう傾向が見えてくると、たとえば、今度は「ザラバで上げる日」と「オーバーナイトで下げる日」を見分ける方法を調べてみようということになります。もしもそれらの分別ができるようになれば、
・「ザラバで上げそうな日」はザラバの取引は見送るが、それ以外のザラ場はすべて売り
・「オーバーナイトで下げそうな夜」はオーバーナイトの取引は見送るが、それ以外はすべてオーバーバーナイトは買い
といった戦略を取ることもできるでしょう。

もしもキーエンス株をひたすら引成(終値)で買って寄成(始値)で売ったら…?

ということで、まずはとにかく買い一辺倒で、2007年の1月から12.5年間ひたすら上記を繰り返すとどうなっていたか見てみましょう。
その結果がこちらです。

上は円表記、下は%表記です。

それぞれ+84321円、+321%と、いずれもとんでもない結果になりました。
1株当たりの利益が+84321円なので、最小単元では8,432,100円の利益です。
手数料考慮前ですが、トレード1回あたりの平均利益が27.6円(100株なら2760円)なので手数料を考慮しても十分に利益がでていたように思います。

Δ終値を適用

では、次に日中の売買では効果てきめんだった「Δ始値」をアレンジした指標、「Δ終値」を使ってみましょう。
ここから先は売りもやってみます。買い一辺倒でここまで利益が出るくらい強烈な上げの中、売りで利益が出せたら相当強烈なロジックではないでしょうか。
ロジックは
「Δ終値」 = 【前日終値】 – 【当日終値】

「Δ終値」が負なら引指で買い、正なら引指で売り、ゼロなら見送り とします。

です。
その結果がこちら

日中ではΔ始値がかなり有効なロジックでしたが、残念ながらオーバーナイトでのΔ終値は話にならないパフォーマンスでした。
買いでは利益が出ていますが売りが足を引っ張って合計値がボロボロです。

見えるローソクを適用

次に、こちらも日中の売買では効果てきめんだった「見えないローソク」の代わりに「見えるローソク」(※というか普通のローソク)を使ってみましょう。

すなわち 「ローソク」 = 【当日始値】 - 【当日終値】
「ローソク」が陽線なら引指で売り、正なら引指で買い、陰線なら十字なら見送りです。

先ほどと同様にロクでもない結果になりました。

では、これらの2つのロジックを組み合わせてるとどうなるでしょう。

重ね合わせのロジック

すなわち、Δ終値、とローソクがいずれも負になれば引け買い寄り売り、いずれも正になれば引け売り寄り売り、というロジックです。
その結果がこちらです。

事態はなんら変わりません。
イケてないロジックを複数組み合わせても状況は改善しないといえそうです。

最後に、ダメもとで指標のパラメータをいじってみましょう。

パラメータ調整

パラメータについては過去の記事「ザ・キーエンスロジック④」をご参照ください。
P=Q=±0.25%の場合

パラメータ調整自体は有効なようです。
何もしないよりはマシになりましたが、この程度では焼け石に水ですね。

わかったこと

検証の結果、次のことがわかりました。
・オーバーナイトは余計なことをせず問答無用で買えばが良かった(今回の記事)
・日中はパラメータP=Q=±0.005から±0.01で、これまでの記事で紹介したロジックを使うのが良さそう(記事①~④)
幸いにも日中には有用そうなロジックが見つかりましたが、オーバーナイトはただ買うのが最強だったなんて、もはやロジックもクソもないですね。

判明した傾向を適応

まさかの+600%

上記の結論を適用した場合、損益グラフはどうなるでしょうか。

なんと、このように恐ろしいパフォーマンスになっていました。
ただ、このグラフを見て「12年半でたかが600%って、株価が7倍になった程度でしょ?そんなの珍しくないじゃん」と思われるかもしれません。
しかし、小刻みに毎日利益を積み上げて+600%(厳密には%を足し算引き算した値は%ではなくポイントといいます)にするのは1往復で600%取るよりもはるかにすごいことなんです。
なぜなら、小刻みに積み立てられた600%のほうでは取引しながら利益再投資=複利計算という選択肢があり、その手法によって資産額を指数関数的に増やすことができるからです。

ただし、前回の記事(キーエンスロジック⑤)でご紹介した通り、個別株には取引可能量の天井が低いという問題があります。
したがってあくまで机上の空論ではありますが、仮にこのパフォーマンスのもとで複利投資していた場合の資産推移グラフはこのようになります。

複利なら100万円スタートで6000億円+


(100万円開始、レバレッジ3倍、売買ロジックに従い始値と終値で上限なく約定するものと仮定)

水色が資産推移で、右軸に対応しています。
横軸が完全にトチ狂っていますね。
100万円スタートでレバレッジは3ですが、ピーク時の資産は9000億円、最終でも6000億円になっています。
最初の頃にどんな動きをしているのかわからないので、右軸を対数目盛にします。

やはりとんでもないことになっています。
100万円スタートで、12.5年で6000億円=60万倍です。
個別株には取引可能量の問題があるので決してこんなことにはなりませんが、同じくらい優位性のある法則を為替で見つけたらこれに近いことができるかもしれません。
積み上げの+600%とはそれくらい尊いのです。

まとめ

為替や先物では今回紹介したような強い単純ロジックを発見するのは大変ですが、個別銘柄は意外と単純な癖で動いていることが結構あります。
複利投資で永遠に増やす夢はあまりありませんが、複利投資をせず小さな取引量で続けていく分には悪くないと思います。

また、最小単元での取引であればおおむねシミュレーション通りの価格で約定していたでしょう。
1株あたりの利益はオーバーナイトで+84000円、日中で+56000円、あわせて14万円になっていたので、単元株の100株の取引でも+1400万円の利益が見込めており、実践していたらかなりおいしかったと思います。

私は自分用のエッジをほかにもいろいろ持っているので、これくらいのロジックは公開しても何も困りません。
なので、今回のロジックはエクセルでのエッジ探索の具体例をご紹介するための具体例として公開させていただきました。
ただし、エッジ(有用なトレード手法・ロジック)は多くの人に知られることで優位性を失って通じなくなっていきます。
本記事でご紹介したので、遅かれ早かれこのロジックは対キーエンス株では通じなくなるでしょう。

結局のところ、他人が見つけたエッジにタダ乗りして大きく勝ったり、チマチマ勝ち続けるのは厳しいと思います。
大きく狙うなら相応の重い対価を支払って運命共同体になるか、自分で見つけるかのどちらかでしょう。
やってみたらエクセルでもわりと見つけられますし、深堀りしているうちに今回の記事でご紹介したのような銘柄固有の特殊な癖に気づくチャンスもありますよ。

さて、キーエンス株と2つの単純ロジックをたたき台にしてシンプルなロジックでも十分なエッジになり得ることを全6回にわたってご紹介してきました。
もしよかったらぜひみなさんも自分独自のエッジを探求してみてください。