対キーエンス株ロジック② 指標を増やす

指標を増やして強化する

前回の記事でご紹介した「Δ始値」は通常のチャートや指標では表示されないベクトル量、いわば見えないベクトルです。今回は見えないベクトルをもう一つ、追加指標として使います。「前日終値→当日始値の変動」です。これは株におけるギャップダウン・ギャップアップに相当します。株は取引が停止している時間のほうが長いため、翌日の取引開始時にとんでもない価格差で始まることが頻繁にあります。ギャップの価格はローソクをよく見れば読めるものの、ローソクのままでは脳内変換を要するためかなり読みにくいです。バーチャートで読むとだいぶましになりますが、それでも頭に負担をかけながら解読する必要があります。株では日中の取引中よりも夜間=取引停止中=ギャップ分の値動きのほうが大きいこともよくあるので、本当は取引停止期間に相当する部分に太いローソクを入れてギャップ分の行間をキッチリ埋める必要があると個人的には思っています。どういうことかというと…

左が現在普通に使われている株の日足チャートです。しかし、本来こうあるべきという株の日足チャートは右です。右のチャートは日足の間にローソクをもう1本追加して取引停止期間のギャップダウン・ギャップアップを表したものです。(スゴトレのイメージカラーでもある)緑のローソクが上昇、赤が下落を表しています。

残念ながらこんな日足チャートは普通使われていません。しかしエクセルを使えばこのようなチャートでは見えにくい指標も簡単に評価できます。今回はこの「見えないローソク」に相当する騰落の値を売買指標として使用します。

2つ目の指標は 「見えないローソク」=【前日終値】-【当日始値】

2つ目のロジックでは4本値のうち始値と終値を使います。

【前日の終値】-【当日の始値】がプラスなら始値(寄り)で売って終値(引け)で買い

【前日の終値】-【当日の始値】がマイナスなら始値(寄り)で買って終値(引け)で売り

変化なしなら見送り

その日の始値が前日の終値より高ければ売り、安ければ買う。終値→始値を指標として、それに対する始値→終値の逆張りをより引けで売買するだけのものです。要は、前回使ったルールのうち【前日始値】を【前日終値】に置き換えただけのルールです。

またしても単純なロジックですが、もしもこのロジックで12年半売買を続けていたらどうなったでしょうか。

損益グラフ

損益グラフは次のようになりました。

前回のグラフと同じく、横軸は日付で、縦軸は日々の損益率(%)を足していったものです。売りから入る空売り・信用取引もしていますが、取引は最小単元とし、レバレッジや再投資は行っていません。青線は買いで入った場合の損益の合計値、赤線は売りで入った場合の損益の合計値です。緑はこれらを足した合計値です。レバレッジ1の場合、それぞれ93.1%、179.5%、272.7%です。前回使ったΔ始値を上回る好成績です。

前回もお伝えしましたが、

・全期間ひたすら毎日始値買い→終値売りを繰り返した場合の損益%の合計値は-89.8%

・全期間ひたすら毎日始値売り→終値買いを繰り返した場合の損益%の合計値は+89.8%

です。つまり毎日買いを繰り返していた場合は-89.8%になっていたものが+93.1%になり、

毎日売りを繰り返していた場合は+89.8%だったものが+179.5%になったということです。

前回使ったΔ始値と同様、売りと買いのパフォーマンスがともに上がっていることがわかります。また、Δ始値と同様に買いについてはマイナスになっていたはずのものがプラスに転じています。

このロジックも前回と同じく、売りでも買いでも利益が出ています。さらに、毎日寄りで買って引けで売り続けていた場合にマイナスになっていたところを、寄り買い引け売りをプラスに転じさせいます。このことから、このロジックも有望と言えそうです。

収益再投資の資産増加曲線を検証

なかなか景気のいい損益曲線を描いているので、このルールの下でレバレッジ1倍で、100万円スタートで収益再投資した場合も見てみましょう。グラフは次のようになりました。

(※最小単元、手数料、スプレッドは未考慮です。最終的には考慮するひつようがありますが、ロジック検討段階ではノイズになることもあるので、これらの考慮は最後の最後にやったほうがいいと思います。)

紫色の線と右軸が資産額(円)を表しています。なかなかいい感じですね。

また、レバレッジが3倍なら当然ですが利益率もこの3倍になります。参考までに、レバレッジをかけた場合の損益グラフは次のようになりました。

なんと、800%超えのすごい成績です。これを収益再投資するとどうなるでしょう。

紫色の線が資産推移(円)です。100万円スタートですが、一時4.5億円を超えています。途中から恐ろしいくらいの勢いで増えていますが、同時に恐ろしいくらいの勢いで減ってもいて、なんだかめちゃくちゃなグラフになっています。右肩上がりをもたらすような有望ロジックの下で再投資をシミュレーションすると資産が指数的な増減となってしまい、最初のころの損益は異常に縮小されて見えなくなり、逆に最後のほうの損益は異常に拡大されてしまいます。これでは適切な評価をしにくくなってしまいます。こういう時は対数グラフを使うと便利です。

右軸を対数目盛に変えてみました。今度は順調な右肩上がりになりました。指数的増加をするものは対数目盛と相性が良いです。

あくまで理論値

ただし、もちろん実際に取引してもこんな風にはなりません。こんなことで大儲けできるなら筆者はとっくに富豪になっています。理由はいくつかあります。まず、手数料やスプレッドを考慮する必要があるからです。さらに、最小単元は100株なので、投資効率が低下してもっと大雑把な資産の増え方になります。さらに、最大で資産は4.5億円を超えることになってはいるものの、レバレッジ3倍では取引量が13億円以上にもなります。いくら寄り引けだけの売買を繰り返すとしても、1度に13億円分もの売買を行うと自分の取引で価格が動いてしまい、銘柄の板が壊れてしまいます。ひいては自分のエッジを自ら破壊することにつながってしまいます。このように、収益再投資を行う際には天井の問題もあります。先物や為替のように莫大な金額をトレードできる銘柄でなければ、どこかで拡大の天井にぶつかってしまいます。収益再投資では、自分の取引が価格に大きな影響を及ぼさない範囲までしか拡大できません。実践するにしても、前回でも問題になったドローダウンがやはり気になります。

とはいえ、これは再投資する場合の問題です。再投資をせず、取引量を価格に影響が出ない程度のサイズに固定して取引するのであれば、このロジックが有望である見込みはやはりありそうです。

次回は、前回ご紹介したΔ始値とこのロジックとの重ね合わせを検討します。

今回の記事の内容を実際にエクセルで試してみたい方のために

最後に、今回の記事と同じことをエクセルで試してみたい方のための付録です。

【参考画像】

【計算式】

A-E列はHyperSBIからダウンロードしたヒストリカルデータです。これがないとどうにもならないのでエクセルでクオンツしたい方はぜひSBI証券の口座を作ってください。

 

G列が今回説明したロジックに用いる指標、すなわち【前日の終値】-【当日の始値】です。

騰落は差額表示ではなく%表示にしています。

 

G3=(B3-E2)/E2 以下、一番下の行までコピー

※G2は前営業日の前年末12/29の株価から計算しています。

 

H、I、K、L、M、N、Oの各列については前回の記事をご参照ください。

 

Gが正ならKを消す(=買い)

Gが負ならLを消す(=売り)

という作業を行います。

手作業では大変なのでマクロを使いましょう。

マクロは次の通りです。

 

【VBAスクリプト】

Sub buysell()

For カウンタ変数 = 2 To 4000
If Range(“G” & カウンタ変数).Value > 0 Then
Range(“K” & カウンタ変数).Clear
ElseIf Range(“G” & カウンタ変数).Value < 0 Then
Range(“L” & カウンタ変数).Clear
Else
Range(“K” & カウンタ変数).Clear
Range(“L” & カウンタ変数).Clear
End If
Next
End Sub

以上が今回のマクロのスクリプトです。

前回のスクリプトのFをGに置き換えただけなので簡単ですね。